東芝が中国の携帯電話端末の生産・販売事業から撤退、保有していた合弁会社の33%の株を合弁相手に売却した。東芝は普天信息産業集団公司傘下の南京普天通信股有限公司と香港の王氏工業有限集団有限公司(ワンズ・インダストリアル)との合弁で、南京普天王芝通信有限公司を設立、端末事業を進めていた。

 東芝の撤退の主な理由は、ハイエンド機種の売り上げが鈍かったこと。中国では年内の比較的早い時期に第3世代(3G)携帯電話のライセンス発行が行われると見られており、その先行きに関しても悲観的な見方をしたもようだ。

 東芝は2004年4月の時点で、中国における携帯電話事業は不採算状態が続いていることを明らかにしており、実際に50億円ほどの投資削減を計画していたという。

 中国の携帯電話市場は、価格競争により中国メーカーを中心としたローエンド製品が主流となっている。また、中国版PHS「小霊通」の爆発的な人気も、ユーザーのローエンド志向に拍車をかけたとされる。「小霊通」端末は通常の携帯電話端末の半分ほどの価格でも購入可能で、通話料金も安く、しかも十分に携帯電話の役割を果たせるとして、大都市を中心に普及していた。

 東芝は南京普天王芝通信有限公司を通じて、03年2月に中国初の動画メール機能を搭載した端末「T618X」を発表するなど、ハイエンド製品に注力してきた。当時は、この動画サービスが、中国の大手通信キャリアである中国聯通(チャイナユニコム)のCDMA-1Xによる高速データ通信サービス「彩e」に対応したもので、東芝がKDDIと培ってきた先進技術を利用した、中国における全く新しい試みとして喧伝されていた。

 しかし現在までに、「小霊通」の以前までの勢いはなくなったものの、中国における携帯電話市場ではハイエンド製品のシェアが低いことに変わりない。先進的な日本仕込みのサービスを応用できる素地が、そもそも現在の中国にさえまだない。2年前の動画メール機能を搭載した携帯電話の展開が、あまりも早すぎたのは言うまでもない。

 そもそも、現在の中国の携帯電話で売れ筋は高くても2000元(約2万5000円)前後。2500元(約3万1250円)までいってしまうと、ターゲットは一気に狭くなってしまう。そもそも、外資系企業などを別にすれば、上海など大都市の大卒初任給は平均2000元といわれている。日系メーカーは、3億を超える携帯加入者を抱える中国に目が眩み、初歩的なマーケティングもせずに「高額商品でも買う人はいる、売れることは売れる」などの幻想を抱いて、6000元以上、時には1万元近くの携帯端末をリリース、当然のことながら失敗する。こうしたケースは、何も東芝だけではない。大げさにいえば日系メーカーすべてに共通しているといえる。

 東芝(中国)の広報担当者は、「中国市場で、携帯電話端末の生産を行う東芝の独資または合弁会社はなくなった。しかし半導体チップなどの部品業務から撤退するつもりはない」と説明。さらに「中国から撤退した後、欧州の携帯電話市場に参入し、ハイエンド機種を生産する計画を立てている」とした。

 しかし、京セラの中国合弁で、最近CDMAで台頭してきている京セラ振華通信設備公司の孫有安・副総経理は、「欧米のメーカーと比べて、日系企業は中国での“本土化政策”をとっておらず、中国市場のニーズに見合った製品を提供できていない」と「失敗の原因」をずばり指摘。

 さらに、中国市場に精通した幹部が少ないために市場に対する反応も遅く、大部分の部品を日本から輸入していることから、生産コストが過度に上昇するなどの現象がみられるという。

 孫副総経理は、「今結論を出すのは時期尚早だ。市場競争で生き残るためにも、日系携帯電話機メーカーは、勇気を振り絞って中国市場とはかけ離れた経営モデルや思考を捨てるべきだ」と主張する。(サーチナ・有田直矢)