アマゾンとイーベイだけがトップを走り続ける米eコマース界。近年その顧客ターゲットはティーンエイジャーに向けられているようだ。生活必需品の購買が少ないeコマース市場での一番の目玉商品はやはり趣味や嗜好に関連する分野。その点で10代を主たるターゲットとする戦略は正解である。低年齢化へ加速する業界を見る。

 米eコマース市場で顧客ターゲットの低年齢層へのシフトが明確化してきた。2005年1月時点ではインターネットユーザーのうち12歳から17歳までの中学・高校生に当たる年齢層のeコマースサイト訪問件数は、1位がイーベイで約500万人、2位のアマゾンが約300万人で、この2社が他のeコマースサイトを圧倒している。

 若年層専門の市場調査会社、ティーンエイジリサーチ・アンリミテッドによれば、米国では今後2010年までの5年間で10代の人口は3500万人近くに達するという。これはBtoCのeコマースが急速に発展し始めた97年時点での2600万人強から実に30%以上の伸びとなる。同社によると、この年代の男子の49%、女子でも40%以上がeコマースでの購買経験があり、特に高校生に当たる16-17歳の層では、利用率は54%と過半数を突破している。

 このような若年齢化への動きが明確になるに従い、これまでこの層への対応がおろそかだった各業界も、積極的なプロモーション活動をオンライン上で展開し始めた。

 米大手百貨店チェーンのメイシーズは、ティーンエイジャー向けのポータルサイト「This It(http://www.thisit.com/)」を立ち上げた。ここは一般的なeコマースサイトと異なり、商品リストや分類のためのタブなどがない。サイト訪問者は米ニューヨーク市マンハッタンのタイムズスクエアに模した画面の中のあちこちをクリックする。すると人気タレントが出演する商品の宣伝ビデオや最新のヒット曲を視聴することができる。その上でその商品が欲しい場合には購買ボタンをクリックする。これでメイシーズのサイトの当該商品のページにジャンプする仕組みだ。

 あくまで感性や流行に敏感な層への対応として、メイシーズのこの試みは業界からの注目度も高い。飲料メーカーや食品メーカーなども同様の手法を採択し始めている。一方、中高年齢層でネット利用が伸び悩んでいることを踏まえ、実店舗では逆に中年層へ戦略変更をした大手小売店チェーンのJCペニーのように、ネットの若年齢化を逆手に取るところも出て来ている。

 一方、若年層の購買の増加により、各種の問題も表面化している。イーベイでは、支払い能力がないにも関わらず高額商品を落札したり、所有していない商品をオークションに出品するケースも増えつつある。これらのうちかなりの割合が未成年の行為であるという。

 また、タバコや酒類の販売についても、クレジットカード決済により未成年への販売が事実上野放しとなっている現状が大きな問題となっている。このため、クレジットカード大手各社によりタバコのオンライン販売ではカード決済をさせないという取り決めが合意され、すでに3月18日からカリフォルニア州やオレゴン州などでタバコのカード決済が停止された。

 課税が難しいオンラインショッピングは税収を確保したい自治体にとっては悩みの種だ。その対策として、ニューヨーク州では他州からのeコマースでの購買に関して、税金の申告時にそれらを全て記載し納税するよう義務づけている。

 音楽コンテンツのネット販売の利用者の大半が10代から20代前半までということもあり、今後eコマースの商品構成の中心はエンターテインメント分野を中心として、そのままティーンエイジャーが求める商品となっていくだろう。今後はいかにして高額で利益幅の広い商品を開拓できるかが各社の課題だ。あまりに商品が多岐に渡るため焦点がぼやけやすいと言われるアマゾンと、取扱商品が出品者に依存するイーベイともども、その地位の維持には何らかのてこ入れも必要だ。

 商品の売れ行きや流行が感覚的なものに左右されると、小回りの利く中小サイトの方が有利であるともいえる。今後の展開如何によっては、eコマース戦線に新たな勝者が生まれてくるかもしれない。(田中秀憲)