台湾の大手ITメーカーであるベンキュー(BenQ、ケイ・ワイ・リー会長兼CEO)は、独シーメンスの携帯電話部門を買収した。聯想集団(レノボグループ)による米IBMのパソコン事業部門買収も記憶に新しく、中華系企業による世界的企業の部門買収が加速していることは確かだ。ベンキューは「世界第4の携帯電話端末メーカーになる」と意気込む。

 台湾最大手の携帯電話メーカーでもあるベンキューは7日、欠損が続いていた独シーメンスの携帯電話事業部門を買収したと発表した。買収額は3億5000万ユーロ(約4億2900万ドル)。アナリストは、「ベンキューが先進国への参入を望むなら、シーメンスブランドの買収はその近道となるだろう」としている。

 シーメンスの携帯電話事業部門売却は昨年末から噂されていた。売却協議は韓国のLG電子や米モトローラとも行われており、中国国内最大手携帯電話メーカーの寧波波導(バード)が有力とみられていたが、最終的にはベンキューで決着。両社は、人材重視や長期ビジョンに基づく経営戦略などの点で共通する企業文化をもっており、その点が他社より有利に働いたとみられる。

 シーメンスが携帯電話事業部門を手放す直接の原因となったのは、赤字続きの業績だ。現在までのところ、シーメンスの携帯電話部門の欠損額は5億ユーロ(約6億1300万ドル)に達している。そのため、シーメンスはここ数年で電子製品市場から徐々に撤退を始めており、タービンやオートメーション設備など工業製品の生産に重点をシフトさせてきた。販売ネットワークの拡充と生産コストの削減を強化するためにアジアの競合先と提携を結んだのは、フィリップス電子やエリクソンに続く動きだ。

 両者の協議で、携帯電話部門の本部はドイツのミュンヘンに置き、ベンキューは今後5年間にわたりシーメンスブランドを使用できることが決まった。買収にはベンキューの株主および関連部門の承認が必要なため、完全な買収完了は9月になる見込み。

 ベンキューの2004年度(04年12月期)における売上高は52億ドル。5月には中国政府から中国大陸における携帯電話機の生産認可を受けた。「3年以内に中国大陸市場で10%のシェアを目指す」と発表していたが、買収発表直後には、「新体制発足後の売上高は年間100億ドル以上になる」と業績予想を上方修正している。また、新しい携帯電話事業部門は06年には収支の均衡を保つレベルに達するとの見通しを述べ、「06年には2億7500万ユーロ(約3億3700万ドル)-5億2000万ユーロ(約6億4000万ドル)程度のコスト削減が可能」とした。

 中国のITコンサル大手である賽迪顧問(CCIDコンサルティング)のアナリストである李学芳氏は、今回の買収について、「両社がともに勝利した形」と分析。「シーメンスにとっては、企業の“重荷”となっていた携帯電話業務を売却したことで財務上の負担が軽減。また、ベンキューの最終的な目標はブランドの国際化であることから、シーメンスブランドの買収はその第1歩となるだろう」との見方を示している。

 一方、この買収を受けて不安を隠せないのはベンキューの契約工場だ。ベンキューの李錫華総裁は、買収により関係が変わることはないと強調し、「ベンキューブランドを維持することと契約工場との関係を保つことは同等に重要だ」とした。

 04年の携帯電話端末販売台数は、ベンキューが1550万台、シーメンスが5100万台だった。ベンキューは「05年の出荷台数は2000万台を超える」と予測。買収により倍増させたいとの考えを明らかにした。しかし、ベンキューの携帯電話事業部門は05年第1四半期(1-3月期)に赤字を出していることから、たとえシーメンスという世界的企業の一部門を買収したといっても、楽観はできない状況だ。(サーチナ・齋藤浩一)