1995年の誕生から10周年を迎えたプログラム開発言語「Java」は、その拡大とともに勢力図は複雑化している。Javaを開発した米サン・マイクロシステムズは、6月末に開催されたJavaOneカンファレンスで「JBI(Javaビジネスインテグレーション)」を発表したが、この裏にはJavaのオープンソース化をめぐる駆け引きがある。

 「Write Once, Run Anywhere(1度プログラムを記述すれば、あとはどんな環境でも動作可能)」を標語にスタートしたJavaは、現在ではパソコンだけでなく、バックエンドのサーバー、さらに携帯電話などの小型機器にまでその範囲を拡大している。JavaOneカンファレンスの会場では、パナソニックの担当者が登場し、次世代DVD規格として有望視される「ブルーレイ」で、将来発売されるプレイヤーでJavaを採用することを発表。Javaの開発メーカーであり、現在もJavaの標準化プロセスに大きな影響力を持つ米サン・マイクロシステムズでは、現在のところ世界に25億台のJava搭載デバイスが存在しており、450万人の開発者がいると述べている。

 ここまでJavaが拡大した理由はいくつかあるが、1つには仕様がオープンであるということが挙げられるだろう。ライセンスさえ受ければ自由にJavaを利用できる。UNIXやLinux文化で生きてきた開発者を中心にJavaは広まり、IBMなどをはじめとする多くのベンダーの支持を受けることになった。現在では、Java仕様の標準化は「JCP(Javaコミュニティプロセス)」という開発者コミュニティに委ねられており、サンの直接の管理からは外れている。実行中に一瞬動作が止まる「ガベージコレクション」やコンピュータが直接実行可能なコードとは異なる「中間コード」と呼ばれる方式を採用したことから、リアルタイムな動作を必要とする計測機器やゲームには向かず、通常のプログラムよりも動作が遅いとされていたJavaだが、現在ではさまざまな改良によりこれらの弱点を克服しつつある。

 順風満帆に見えるJavaを取り巻く環境だが、裏では主要ベンダー同士の勢力争いをめぐった綱引きが続いている。6月末に標準化が発表された「JBI」は、異なるJavaアプリケーション同士がXML技術をベースにした「ESB(エンタープライズサービスバス)」を使って互いに通信するための手法を定めたものだ。現状では、アプリケーション同士が連携するための標準仕様は定められておらず、必要に応じて独自の実装技術を加える必要があった。JBIの登場により、これらの手法が統一され、アプリケーション同士の連携が容易になる。現在ビジネス・アプリケーションの世界では「SOA(サービス指向アーキテクチャ)」がブームになっているが、JBIはSOAをJavaの世界で実現するものだ。

 業界にとってはメリットが大きいと思われるJBIの登場だが、実はJBIの標準化直前、IBMとBEAシステムズというJavaの世界での2大メーカーが最終投票を棄権、標準化プロセスから離脱している。理由は明らかにされていないが、一部関係者によれば「JBIの仕様が不完全」という意図があったという。また、サンら対抗勢力への反発との見方もある。

 IBMとBEAは、それぞれ「ウェブスフィア」、「ウェブロジック」という形で、Javaをサーバー側で実行するための「Javaアプリケーションサーバ」と呼ばれる製品をもっており、市場全体のシェアの7-8割を占有している。サンも「Javaシステムアプリケーションサーバー」をオープンソース化するなどの方法で対抗しているが、この差を縮めるのは容易ではない。またIBMは、Java開発者に人気の開発ツール「エクリプス」に多額の投資を行った後、IBM本体からプロジェクトを切り離し、オープンソースとして公開している。エクリプスは特にJava開発者からの支持が大きく、業界では近い将来にもほぼ標準の開発ツールとなると考えられている。

 IBMやBEAらはこうした支持を背景に、Javaに対する影響力を強めようとしており、サンに対してはより一層のJavaのオープンソース化を要求する。一方でサンは、こうしたプレッシャーを跳ね除け、自らの地位を確立しようと必死だ。(鈴木淳也)