中国で第3世代(3G)サービスの開始時期をめぐる憶測が飛び交うなか、通信費の安さがウリの中国版PHS「小霊通」の加入者数が8000万人を超えた。中国の移動体通信端末は、高価格商品と低価格商品の二極化が進んでおり、小霊通は豊富な低価格市場のニーズを捉えることに成功。毎月250万件の新規契約を獲得している。

 情報産業部は、6月末時点における小霊通の加入件数が8000万件に達したと発表した。毎月の新規加入件数は約250万件となっていることから、このまま推移すれば2005年末には1億件を超える可能性が出てきた。

 小霊通は、日本のPHS技術を応用したもので、正式名称が個人無線市内電話(パーソナルアクセスフォン、PAS)であることから分かるように、あくまで固定電話との位置づけである。そのため、厳密には移動体通信とは呼べない。運営に当たるのは中国の固定電話事業をほぼ独占している中国電信(チャイナテレコム)と中国網通(チャイナネットコム)だ。

 中国社会科学院情報化研究センターの劉満強・副研究員は、「一般ユーザーのニーズに合わせた事業展開が発展を持続させている要因」と分析。小霊通で使われている技術自体は特に先端をいくものではなく、3G携帯電話に比べれば時代遅れという声も聞こえる。

 しかし、携帯電話市場では多くのメーカーがローエンドモデル重視の戦略にシフト。低価格市場のニーズと小霊通が得意とするターゲット層が合致したことが、小霊通の加入増加につながっている。

 また、ネットワークのグレードアップや、新技術、新サービスの展開も、小霊通の発展を支える要因の1つだ。中国の2大固定電話キャリアである中国電信と中国網通は、江蘇省、浙江省、四川省、山東省、河南省、北京市を重点に回線容量の増強工事を進めている。音声通話の質は携帯電話と大差ないレベルにまで向上している。

 中国電信と中国網通は、こうしたインフラの整備を進めると同時に、5月には「世界通信の日」に合わせてカード分離式モデル端末を投入。小霊通最大のネックだった使用地域の限定という問題を間接的に克服したことで利便性が向上。「一段と携帯電話に近づいた」と好評で、社会的な話題にもなった。同時に、SMS(ショートメッセージサービス)、カラーメッセージ、着信音バリエーションの増強、インターネット接続など、さまざまなサービスを打ち出している。7月下旬には、小霊通のSMSを使用した114番号案内サービスも開始している。

 また、室内で弱いとされていた電波状況を改善すると同時に、小霊通端末を固定電話としても使えるようにする「Q boxサービス」を一部の都市で試験的に導入。固定電話との融合をめざす戦略を本格的に開始した。固定電話キャリアが運営を行っていることからも明らかだが、小霊通はもともと「固定電話のワイヤレス版」としての性格が強かった。発信側のみに課金されるなど、いわゆる携帯電話とは一線を画しており、携帯電話のライバルという位置付けは必ずしも適当ではない。むしろ、「Q box」のような固定電話との融合が、小霊通に求められるサービスとみていいだろう。

 業界では「小霊通の人気も3Gサービスの開始まで」という見方がある。中国のIT調査会社である易観諮訊公司は、「小霊通市場は、3Gライセンス解禁後3-5年間は3G市場と共存するが、ネットワークの拡大スピードは次第に減速する」とみている。しかしその一方で、「3Gサービスとは別のユーザー層から支持を得て、3Gと共存していく」とする意見も多い。

 いずれにせよ、小霊通が今後も発展していくためには中国政府の政策に左右されることはやむをえないが、携帯電話との住み分けがうまく進むかどうかがカギとなってくる。(サーチナ・齋藤浩一)