【上海発】中国では、どのウェブ検索サイトでも、曲名を使って検索すればすぐにその曲をダウンロードできるリンクが出てくる。制限は何もない。音楽の不正コピー状況は想像がつくだろう。では、「互聯網著作権行政保護弁法(インターネット著作権行政保護規定)」(以下「弁法」)が5月30日に施行された後、何か結果は出ているのだろうか。

 8月5日、ウェブ検索サービスなどを提供する「百度(バイドゥ)」はナスダックに上場したが、その直前に、著作権管理会社の北京源泉公司から、不正コピーのリンクページを直ちに削除するよう要請されており、そのほかにも2件の版権関連訴訟が未処理の状態にある。ページアクセス世界トップ5を誇る百度だが、そのアクセスの22%がMP3ファイルの検索を目的としたものだ。

 「弁法」第5条によると、インターネットで権利侵害の事実を発見した場合、権利者はISP(インターネットサービスプロバイダ)、あるいはその依頼先宛に書面通知を送る。ISPは即刻措置を取り、該当内容を削除する義務がある。百度の場合は間接権利侵害と見なされ、権利者の請求を受けた後、24時間以内に策を講じないと責任を負わなければならない。ちょうどIPO(株式公開)前後に出てきた話でもあり、余計なトラブルを招かぬよう、百度の代表は「和解ルートを求め、適切に処理する」との意思を表明した。

 8月15日、中国トップ3のICP(インターネットコンテンツプロバイダ)である「網易」は、MP3ファイル検索の結果、リンク先のほとんどが楽曲配布の権利を持っていないことを理由に、MP3ファイルの検索サービスを一時中止すると発表した。「健康で積極的なイメージを保ちたい。猿知恵のようなことはしない。エッジボール(触法ぎりぎりの行為)をやらない。MP3ファイル検索は直接権利を侵害したわけではないが、権利侵害行為を助長したことは事実だ」との宣言書も公表している。

 このサービスをいつ頃再開するのかと記者に聞かれた網易の代表は、レコード会社や歌手などの権利者の権益がきちんと保護されていることが前提条件であると回答した。法律のリスクを回避する一方、業界の手本となることも目的だとした。ただ、残念なことに、他の大手ICPには同じ動きをする気配が見えない。網易の宣言に対しては、各社、建前のコメントをしただけだった。

 音楽検索については論争があり、中国国内の法律はこの問題についてはっきり規定していない。グーグル、ヤフー、MSNなど海外検索エンジンが慎重に扱うMP3ファイル検索サービスは、国内のドットコム会社にとっては効果的なアクセス向上手段にもなっている。しかし、知的財産権が重視されつつある今、インターネット上の著作権問題も次々に浮上しており、音楽検索サービスの合法性を巡るこの出来事は単にその一環であり、次は、やはり数多く見かけられる電子書籍(e-book)のダウンロードサイトも注目されてくるだろう。

 ナスダックに上場したICPである「搜狐」の張朝陽CEOは、「海賊版ダウンロードサイトがなくなると、正規版ダウンロード市場が立ち上がると思われる。携帯電話の音楽ダウンロードと同じく有料となり、利益は権利者と著作権代理業者とがシェアする形になるだろう」とコメントしている。

 この記事を書いている最中に、あるニュースサイトの記事から、アップルコンピュータがグーグルサーチエンジンを通してグーグル版「iTunesミュージックストア」を提供するかもしれない、との噂が入ってきた。具体的な形はまだ分からないが、このような協力関係は中国国内にとって、今後の参考になるのではないかと思う。

 国家版権局の情報によると、「弁法」はあくまでも一時的な対策で、国務院部門の規定に帰し、効力は比較的弱い方だという。さらに高いレベルに位置づけされた「信息網絡伝播権保護条例」(仮称、「互聯網著作権保護条例」との提議もある)は現在、ハイ・プライオリティで作成中である。
魏鋒(ウェイ・フェン=ACCS上海事務所担当、shanghai@accsjp.or.jp)