米ネットオークション大手のイーベイは、ルクセンブルグのIP電話サービス会社のスカイプ・テクノロジーズを買収することで合意したと発表した。この買収は、ネット業界で衝撃を持って受け止められている。しかし当事者は意外なほど平静であり、自社の戦略には自信を持っているように見える。ネットビジネスのこの一手は、今後各方面にどのように影響していくのであろうか。そしてイーベイにとって、今回の買収は正しい判断であったのだろうか。

 イーベイによる今回の買収総額は約26億ドルと言われており、今後の業績次第では更なる資金追加も検討されているという。スカイプの発行済み全株式を、イーベイが現金と株式交換で取得する形で年内をめどに売買を終了させる予定だ。

 スカイプの取得で、イーベイは今後の戦略で多くの選択肢が生まれる。スカイプの技術を利用して、オークション時に売り手側と買い手側が直接通話で交渉できるようにする機能がまず最初に考えられる。これまでのイーベイが苦手としてきた、取り引きに複雑な交渉が発生する商品も今後は取り扱いの増加が見込まれる。

 イーベイが既に買収し同社傘下となっているペイパルのオンライン決済サービスと組み合わせ、スカイプの有料サービスでペイパル経由の決済も難なく実現可能だ。現在イーベイの収益は取引時の手数料に依存しているが、今後は通話技術をベースとした各方面への進出も見込まれる。

 欧州が拠点のスカイプとの提携だけに、これまで米国が中心だったイーベイのビジネスエリアを全世界に広げることも可能だろう。それぞれのユーザーが各サイト間を行き来することによる相乗効果などは言うまでもない。

 ところが今回の買収には疑問の声も多い。イーベイはこの1年あまりでショッピング・ドットコムなど多くの企業買収を進めており、この方針は多くのアナリストから懐疑的に見られている。今回の買収も、より技術的に優れた他のVoIP企業がなぜ対象でなかったのかが取りざたされている。ペイパル買収のように、短期間では結果が出ない買収であることも懸念材料の1つだ。

 しかし当事者たちは意に介していない。アマゾンなどと並ぶ最も初期のインターネットビジネスの成功例であるイーベイだが、その成功要因には他のオンラインビジネスのライバルとはやや違う点も多い。イーベイの創業者ピエール・オミディア氏は、夫人が趣味で集めていた玩具をネットで売買することからイーベイのビジネスモデルを生み出したと言われており、その後のITブームと相まって同社を一大企業へと育て上げた。

 オミディア氏は創業初期から自身の経営者としての能力を過信せず、外部から経営経験豊富な人材を登用し、同社の経営を一任。この手法が功を奏し、経営者の地位や肩書きに固執するが故に資金の枯渇をはじめとする各種の経営危機に見舞われる若い起業家達をしりめに、順調な成功を収めてきた。

 スカイプの創業は2002年で、まだ若い会社だ。いまだ黒字転換を果たせていないにもかかわらず、巨額な金額で買収されたことで、創業者たちは大成功を納めたと言って良いだろう。少なくとも両者にとってはこの買収劇は全く不満のないもののようだ。

 実は今回の買収劇は、これまでIT分野で言われていたことを改めて確認したに過ぎない。それはネット業界での最終的な勝者は、いかに自社に多くのユーザーを集めることができるかにかかっているということだ。全てのネットビジネス大手は、まさにその為にこぞって自社サイトのポータル化に躍起なのであり、イーベイの判断もその路線に則ったものに過ぎない。

 イーベイもこれまでのオークションサイトというレッテルを自ら剥がし、本格的なシェア争いに参加することを表明したということなのである。(田中秀憲)