富士通(黒川博昭社長)は、株式公開企業を対象としたコーポレートガバナンス(企業統治)向上のための内部統制強化に関するITニーズに対応するため、今年度(2006年3月期)末までに専門知識を持った専任担当者を100人育成する。来年度(07年3月期)中には計300人に増やす。金融庁では財務諸表の内容について企業経営者の責任を明確化する内部統制強化の基準確定作業を進めており、富士通ではこうした動きに対応するため専任の人員を強化する。主力のERP(統合基幹業務システム)「グロービアシリーズ」についても、来年度以降、順次内部統制に対応していく。

 内部統制の強化では、業務処理の履歴を残し、誰がどのような決裁を行ったかを明確化するとともに、意思決定を行うプロセスそのものを合理化する必要がある。業務プロセスの管理を徹底するには財務会計システムだけでなく、場合によっては生産管理や販売管理システムの見直しを迫られる。連結売上高が1兆円を超える大手企業では、業務プロセスの調査や手直しなど費用の総計で100億円規模の投資が必要なケースも出てくると言われており、ITベンダーにとって大きなビジネスチャンスになる可能性がある。

 富士通においても、すでに米国の企業改革法(サーベンス・オクスリー法=SOX法)などで用いられている内部統制の基準を参考にして、自社の業務プロセスの見直しに着手している。金融庁による基準が確定次第、同基準とのすり合わせを行う。富士通グループの顧客企業のうち株式を公開している社数はおよそ1000社と見られており、自社の内部統制の強化を行った後に、顧客企業の内部統制の支援を本格化する。内部統制の強化には専門的な知識を持った人材が不可欠なため、富士通本体だけで年度内で100人の専任担当者を育成する。来年度中には300人に増やす。

 内部統制の義務化の時期は定められていないが、07年度(08年3月期)以降の決算で内部統制に対応する企業が多いと見られており、業務プロセスの調査や見直し需要は「来年度早々から急速に高まる」(小村元・富士通コンサルティング事業本部プリンシパルコンサルタント)と予測する。

 常に変化するビジネス環境に応じて、業務プロセスは頻繁に変更しなければならない。このため、業務プロセスを調べた後は、ITツールを活用して最新の情報を随時アップデートする必要に迫られる。業務プロセスの調査や見直しだけでも企業の負担は相当大きいものになると予測されるが、最新の情報を常に管理し続けるのは「さらに負担が大きくなる」(五十嵐司・富士通マーケティング本部企画部部長)と考えられる。富士通ではITを活用した内部統制の維持管理の効率的な仕組みを提供することで、顧客企業の負担軽減に貢献する。

 主力のERP「グロービアシリーズ」は、来年4月頃をめどに、内部統制への対応に向けたロードマップを明確にする予定。これに伴い、富士通グループやビジネスパートナーとの連携を強化し、グロービアシリーズを活用した内部統制ソリューションを展開する準備を進める。人材豊富な大手企業では自社内である程度の対応はできると予測されるが、中堅企業ではパッケージソフトなどを適用していくことで、人手をかけずに迅速な内部統制強化の実現を目指す。

 内部統制の強化にともなう業務プロセスの見直しにより、ERPなど基幹業務系システムの刷新需要が高まると見られており、富士通では人材、製品ともに万全の準備を整えることでビジネスの拡大を狙う。