リコー(桜井正光社長)は、1月末に本社機能を新事業所(東京・中央区銀座)へ移転したのを機に、社内のOA機器環境を大幅に変革した。従来はレーザープリンタ(LP)やデジタル複合機(MFP)を部門別に導入し、個別に管理をしていた。新事業所では、単機能のLPをゼロにして、MFP中心のOA機器を共有スペースの「コピールーム」に集約。移転前のオフィスに比べ、OA機器の設置台数は72%減ったという。同社と同じく、キヤノン販売も東京・品川の本社でLPを全廃した。両社とも本社は「実験オフィス」と位置づけており、「すべての企業へ提案するわけではない」としている。しかし、プリンタ大手2社が「集約化」へ舵を切ったことは、注目される。

 リコーの新事業所は、地上25階建ての三井不動産ビルを賃借し、このうち1-15階の事務所約2万1300平方メートルを占有している。移転人員は、営業や企画、人事、経理など中核部隊約1800人。移転を機に、ICカードによる社員証システムを導入し、入退室管理やパソコンのログイン、OA機器の利用などの業務を統一したセキュリティ環境下で利用できるようにした。

 新事業所は、1、2階のオープンスペースと9階の食堂を除き、3-8階を下層階、10-15階を上層階とに分け、「共有プリントサーバー」をそれぞれ設置。各階のフロアーには、部門別でなく、MFP2-3台を1つの場所に集約した「コピールーム」を3か所置いている。例えば、下層階に席を置く社員は、印刷ジョブを上層階のサーバーへ送れば、10-15階の「コピールーム」で印刷できる。

 印刷する際は、ICカードで認証し、自分のジョブだけを出力できる。これにより、機密プリント用紙の放置や取り違えを防止できるほか、「印刷前に削除ができ、ミスプリントを減らすことができる」と、ITシステム担当の栗野隆正・IT/S本部IT/S技術センター副所長は話す。

 これまで、OA機器の運用やサプライ・紙在庫の管理、故障対応などは各部門別で行っていたが、新事業所では、総務部に「サポート窓口」を新設して、一元管理している。個人の出力ログや機器の不具合などを1か所でレポートすることにより、「集約化」による運用面の問題点を把握し、改善することができるという。

 また、リコーの紙文書電子化基盤「Ridoc Document System(RDS)」の利用も積極化した。入手した紙文書や文書の素材など情報資産を電子化して、紙削減を推進。電子化した文書や素材は、「Ridocサーバー」に保管して、サーバー内で情報活用できる。さらに、移転に伴って、独自に社内用ウェブポータルサイトを構築し、基幹システムやファイルサーバーなど社内に散在する情報を横断的に検索して、利用できるようにした。

 OA機器の集約化を図ったことで、移転した旧本社事務所や東京・中央区の銀座事務所などに比べ、LPとMFPは307台から85台に減らすことができた。

 リコーの新事業所は今後、「実験オフィス」として一般に公開する。LPの販売責任者である同社の武田健一・LP販売推進室室長は、今回の「集約化」について、「セキュリティの観点から、(出力の)出口を集約化する動きが高まっている。自ら実験台になることで、善し悪しを把握し、最適な提案に結び付ける」という。しかし、「これまで通り、提案活動の中心は、LPとMFPを組み合わせた活用提案が中心になる」(同)と、実際の営業活動にそのまま適用するわけではない。

 一方、キヤノン販売は「ワークフロー次第では、MFPに一本化する企業もあるかもしれないが、一方では、LPだけで満足という企業もある。実際は、(MFPだけの事務所は)使い勝手が悪い」(峯好文・ページプリンタ商品企画部部長)と述べ、一気に集約化へ市場が動くことには否定的だ。