NEC(金杉明信社長)のシンクライアント商材の引き合いが急増している。この1年間でおよそ500件に達し、企業向け商品の1ジャンルに対する案件数としては「過去に例をみない多さ」(平智徳マーケティング推進本部マネージャー)と驚きを隠さない。このうち半数近くはNECが独自に開発した「仮想PC型」と呼ばれる方式に集中していることから、その強みを生かして有利なビジネス展開が可能になると見ている。

 複数あるシンクライアント技術の中で、NECは3種類を主軸に位置づけている。1つめは最も早い段階から存在している表示画面のみをクライアントに転送する「画面転送型」、2つめはクライアントのCPUとメモリを活用することでサーバーの負荷を軽減する「ネットブート型」、3つめが独自で開発した「仮想PC型」である。

 画面転送やネットブートは、ISVなどが開発したミドルウェアを使っているため、競合するコンピュータメーカーも類似商品を投入できる。画面転送型は遠隔保守サービスなどで多用されている一般的な技術で、ここ数年の間に、ネットブート型も教育機関で使うパソコンなどで急速に普及してきた。NECは他社との差別化を図るためにサーバー内でパソコンを仮想化する技術を昨年4月に発表、シンクライアントの「本命技術」と位置づけている。

 こうした思惑が的中し、引き合い数の中で半数近くが仮想PC型に集中。次にネットブート型、画面転送型が続く結果となった。引き合いの規模についても違いが出ている。仮想PC型が数千─数万クライアント数と大規模案件が多いのに対して、その他は数百クライアントと中規模案件が中心になっている。引き合いの半数以上は他社ユーザーが占めており、NECへの乗り換えも期待できるとみている。

 顧客がシンクライアントを検討するきっかけとなっているのは、情報漏えいを防ぐためのセキュリティ対策であるとともに、トータルコストを削減する点にもある。仮想PC型はコンピュータ室で集中的にクライアントを管理したり、稼働率が高いクライアントにサーバーのリソースを優先的に割り当てるなど、コンピュータ資源を柔軟に活用ができる。これにより従来型パソコンのトータルコストに比べて3割ほどの削減が見込めるという。

 2007年度(08年3月期)には、企業向けパソコン市場全体の1割程度がシンクライアントへ移行するとNECでは予測している。仮想PC型シンクライアントは案件規模が大きくなる傾向が強く、また新規顧客からの引き合いが多いことから、同分野におけるトップシェア獲得の原動力になると手応えを感じている。