総務省と(財)地方自治情報センター(LASDEC)が、全国1950市町村を対象に実施した「市町村における業務システムの導入および運用に要する経費等の調査」の最終結果がこのほど公表された。すでに集計途中の段階で大学研究機関や大手ITベンダーによるデータ分析が始まっており、電子自治体のシステム経費の実態解明が今後、一気に進む見通しだ。情報システムに対しては、ユーザーから「コストが不透明」「投資効果が見えにくい」との批判も根強いだけに、今回の調査の分析結果がIT投資の指標として活用される可能性があり、ITベンダーに対してシステム構築・運営費用の透明性を求める声が一段と高まっていくことが予想される。

総電子自治体 システム導入費の透明性高める


 今回の調査は、総務省が2003年度から推進している電子自治体構築のための共同アウトソーシング事業を06年度から全国展開するのに先立って実施した。これまでも各地方自治体は単独で数多くの業務システムを導入してきた。だが、地方財政が悪化するなかで、多額の経費が必要な情報システムは議会や他の部門から「金食い虫」と批判の声があがることも少なくない。このため今後、必要なIT投資のための予算措置を行っていくうえで、客観的な基礎データを示すことが必要不可欠との判断が背景にある。

 調査内容は、業務システムを財務会計、人事給与など28システムに分類し、システムごとに導入状況(稼働年月日、システム更新予定など)、システム構成(汎用機かクライアントサーバか、パッケージ使用の有無など)、システム費用(構築費用、運用経費、保守経費、リース期間など)などを調べた(図1)。これを地方自治体の人口規模別に分類することで、同じ規模の地方自治体がどの業務システムをどれくらいのコストをかけて導入しているかを比較できるようになる。標準的なシステムコストの目安が分かれば、経験が少ない地方自治体の発注担当者でも、ITベンダーが要求するままにコストアップする事態を回避し、適正価格での発注が可能になるというわけだ。

 今回の調査で興味深いのは、調査データを地方自治体だけで利用するのではなく、LASDECのホームページを通じて一般公開したことだ。一定の条件を満たした企業や大学研究機関に対してはデータを分析しやすいようにエクセル形式でのデータ提供も行う。調査データにはシステム構築・運用を担当したITベンダーの名前は記載されていないが、ITベンダーにとっては競合相手がどれくらいの費用で納入しているのかを詳細に知ることが可能になるわけで、利用価値は高い。データの一般公開によって、ITベンダーに価格競争を促すとともに、単独導入に比べて経費の大幅な削減が可能な共同アウトソーシングによるシステム提案を活発化させる狙いがあるとみられる。

photo 今回の調査結果について報告を受けた総務省の「電子自治体のシステム構築に関する検討会」(座長・須藤修東京大学大学院教授)の会合では、引き続き毎年1回程度、調査継続の必要性を訴える声が相次いだ。今後のシステム再構築によって経費がどのように変動していくかが明らかになれば、システム経費の透明性がさらに高まることが期待できるためだ。ITベンダーにとっては、新しい導入事例が追加された調査が公表されるたびに新たな対応に迫られる懸念もある。収益悪化の原因となる過度な安値受注に陥るリスクを十分に意識する必要がありそうだ。