【深セン発】欧州勢の活躍が目立つ。といっても日本の大相撲ではなく、中国大陸という広大な土俵の上のことだ。

 今年2月、ヨーロッパを代表する半導体ベンダーであるSTマイクロエレクトロニクス社のカルロ・ボゾッティCEO(最高経営責任者)が、中国・広東省深セン市に姿を見せた。そこで語ったことは、まさに「綱取り」宣言そのものだった。

 EU委員会が4月から中国製の靴に対して反ダンピング関税を適用することを決定したように、EUと中国の間に横たわる通商問題はけっして少なくない。しかしビジネス上のつながりは年々緊密になっており、双方の関係は深まる一方だ。その証拠に、中国に対する先進技術の供給元としてのEUのシェアは著しく増大しており、欧州企業による中国投資も増え続けている。

 この傾向はリニアや地下鉄などの鉄道分野だけでなく、ITを支える半導体分野にも現れている。代表はなんといってもSTマイクロエレクトロニクスで、その中国への急激な傾斜ぶりは注目に値する。

 最初の中国投資は1994年の半導体組み立て拠点の設立だった。賽格グループとの合弁で深セン市に設立した拠点企業「賽意法微電子」はその後も順調に操業を続けているが、10年後の04年11月には、フラッシュメモリのテクノロジーパートナー韓国・ハイニクス(Hynix)社との合弁で江蘇省無錫(むしゃく)市にメモリの前工程製造事業に乗り出すという決定をした。

 その韓欧合弁工場のクワ入れ式が行われた05年4月28日の半年後には、これまで「アジア・パシフィック」で一括されていた中国、香港、台湾のオペレーションを独立させ、それらを専門にカバーする「グレーター・チャイナ」機構を設置した。これらの施策だけでも、中国におけるSTのプレゼンスは大いに高まった。

 しかし06年が明けて間もない2月15日、同社のカルロ・ボゾッティCEO(最高経営責任者)は再び深センに姿を現わし、新たな投資に踏み切ることを高らかに宣言した。

 市内の高級ホテル「五洲賓館」のファンクションルームではその日、STの新規投資プロジェクトに関する協力協定書の調印式が行われていた。相手は深セン市政府。STマイクロは同市の「龍崗宝龍工業区」に5億ドルを単独投資して、新たなメモリ組み立て拠点を建設することにしたというわけだ。「2010年以降は中国が世界最大の半導体市場になる。新工場は、年産70億個のキャパをもつ中国最大の半導体組み立て工場になるだろう」と宣言した。

 半導体の欧州代表はいま、広大な土俵上での「綱取り」に本気で取り組み始めたのである。(サーチナ総合研究所リサーチャー 森山史也)