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米エントラスト ネット上の詐欺行為を検知 金融向けに国内でも販売網

2006/09/11 18:02

週刊BCN 2006年09月11日vol.1153掲載

 米エントラスト(テキサス州、ビル・コナー会長兼社長兼CEO)は、今年7月に米国で販売を開始した「Bussiness Signature eFraud」日本語版の国内販売を年内にも始める。エントラストが7月に買収したビジネスシグネチャーズの開発製品で、オンライン上の詐欺行為を検知するためのソフトウェアだ。ネットを通じて振り込みなどが行える「オンラインバンキングサービス」を提供する金融機関をターゲットに置く。日本ではオンライン詐欺被害は米国よりも少ないといわれているが、今後1-2年の間に急増すると予測。日本市場でも金融機関をターゲットに来年から拡販に本腰を入れる。そのための代理店獲得に、すでに動き始めている。

 米国ではオンライン詐欺の被害が深刻な問題となっており、「8900万人の国民がIDを盗まれた経験がある」(ケビン・シムザー・シニアバイスプレジデント)という。とくに、金融機関が一般消費者向けに提供する、インターネットを通じて振り込みや残高照会などが可能な「オンラインバンキングサービス」で利用するIDやパスワードを盗まれる被害が多い。

 米国政府はこうした状況に対処、オンラインサービスを提供する金融機関に対して、情報システム上でID・パスワード認証以外の認証システムを導入するか、詐欺行為の疑いがあるアクセスを検知する製品・サービスの導入を、年末までに行うことを義務づけた。しかし、「まだ全金融機関の80%は未対応」(シムザー氏)という状況だ。

 エントラストは、特需が生まれると判断し、強みの個人認証関連のソフトウェア「Identity Guard」に加え、詐欺行為を検知しアクセスを遮断するソフト「Bussiness Signature eFraud」を持つビジネスシグネチャーズを約5000万ドルで買収。7月から米国市場で販売開始した。エントラストはもともと金融機関に強く、グローバルでの顧客1500社のうち、約400社が金融機関で、製品ラインアップの強化によりシェアを高める。買収により、売上高は来年末までに14億円の上積み効果を期待している。

 一方、日本は法規制もなく、オンライン詐欺被害も米国に比べて「1-2年遅れている」(同)とみられるが、今後は米国同様の被害状況になると判断し、日本語化して年内に発売することにした。また、ソフトとしての提供だけではなく、アプライアンスとしての販売も計画中だ。

 製品リリースに加え、金融機関市場に強いSIerとの代理店確保にも動いており、金融機関市場を戦略的マーケットとして位置づけている。日本市場での金融機関向けビジネスは、まだ全体の10%未満という。

 「Bussiness Signature eFraud」は、オンライン上に流れるトラフィックを常時監視して分析。通常のトラフィックと違う動きをしたアクセスを遮断するソフトウェア。既存システムを変更することなく利用できるため、導入が容易という。類似製品としては、米ベリサインや米RSAセキュリティが商品化している。
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