財団法人日本情報処理開発協会(JIPDEC)は、『情報化白書2006』の刊行に合わせて、白書の創刊40周年を記念した特別講演会を11月20日に都内で開催した。『情報化白書』の創刊は1967年。当時は『コンピュータ白書』として刊行されてきたが、創刊20周年を機に『情報化白書』とタイトルを改め、日本の情報化の歴史と課題、これからの展望を位置づける指針としての役割を果たしてきた。講演会では、JIPDEC・児玉幸治会長や、情報化白書編集委員会・石井威望委員長などが、「情報化の未来を創る」をテーマに講演した。

 『情報化白書2006』は、JIPDECが編纂し、BCNが発行・販売元となって、10月30日に刊行された。記念講演会は、白書の巻頭企画である「情報化の未来を創る」をテーマに、関係者、執筆者たちが情報化の展望と日本の情報産業が果たすべき役割などを論じた。

 冒頭の挨拶で児玉幸治会長は、この40年の間に、「『情報化白書』が創刊した時代に生まれていなかった人たちがIT推進の中核を担っている。こうした生まれながらのIT世代によって、ITは生活に根づいた情報ツールになった」として、現在の情報化の主役は個人であると提唱。同時に、情報セキュリティや個人情報の問題、内部統制など、情報化の功罪というべき問題が表面化していることをあげて、一人ひとりが情報をどう活用するかという集合知が求められる時代になったと指摘した。

 その一方で、「今年1月に打ち出されたIT新改革戦略や、新経済総合戦略、情報大航海時代プロジェクトなどにより、日本がアジアのオープンな情報の架け橋としての役割を担う時代になった」として、日本の情報化がアジアを含めた新しい文化の形成に果たすべき役割を強調した。

 次いで、1985年から『情報化白書』の編集委員長を務めてきた東京大学の石井威望・名誉教授が、「情報化の新潮流」と題した特別講演を行った。

 石井名誉教授は、80年代がアメリカと日本の情報活用の分岐点であったと指摘。「80年代は日本がものづくりにおける国際競争力で圧倒的な優位にあった時期」と位置づけ、「これに危機感を抱いたアメリカが情報システムの徹底的な活用を研究することで、日本が予測し得なかった新しい情報化の時代を到来させた」と分析して、こうした状況が現在に至る日米の情報格差の根底になっているとの認識を示した。さらに「85年にアメリカで誕生した量子コンピュータ理論の研究が実用化に向けて大きく前進し、現在はこれまでのデジタルから、量子レベルの情報化へのジャンプが始まりつつある」として、「そのなかでWeb2.0をはじめとして、情報化の歴史が大きく進化する予感がある」と、今後の情報時代の進展に大きな期待を表明した。