政府機関で電子文書の交換に用いる標準形式として、ODF(Open Document Format)が採用される見通しが強まった。来年度から本格化する政府機関のパソコンのリプレースをにらんだもので、年内にも政府機関の情報システム調達指針に盛り込まれる。また経済産業省は公的機関における電子文書の互換性を調査し、民間にも国際標準仕様の積極的な採用を促す。

年内にも調達指針
PC一千万台のリプレースに影響か

 ODFは米サン・マイクロシステムズ社が提唱したオープンソースソフトウェア(OSS)型の文書交換フォーマットで、XMLをベースにテキストファイルとバイナリファイルをZip形式の圧縮ファイルで1つにまとめることができる。マイクロソフトのMS-Officeで作成されたデータとも互換性を持っており、OSに依存しない特徴がある。

 昨年5月にサン・マイクロ、IBM、ノベル、グーグルなど米国13社が推進組織「OASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)」を結成し、同年11月には世界の主要なITベンダー280社が参加する「ODF Alliance」が発足している。国際標準化機構(ISO)が今年5月に標準規格として批准したのを受けて、米マサチューセッツ州、ミネソタ州やEU(欧州連合)のベルギー、デンマーク、フランスなどが採用を決定している。

 電子政府システム調達では、原則として「国際標準仕様への準拠」をうたっていたものの、パソコンのOAツールについては「標準的なソフトウェア」という表現が用いられ、事実上、マイクロソフトのWindowsとMS-Officeを推奨する結果となっていた。これに対して一部で「特定メーカーの技術仕様に依存するのは不自然」との指摘があり、2004年3月の行政情報システム関係課長連絡会議で電子文書の交換システムの見直しが合意されていた。

 同連絡会議では当初、共通フォーマット案としてPDFが有力だったが、ISOがODFを承認したことを受け、ODF案が急浮上した。総務省、経産省などが年内策定を急いでいる政府機関の情報システム調達指針では、「国際標準への準拠」を再度強調するにとどまるとみられるが、これによりMS-Office以外のアプリケーションにも導入の可能性が広がりそうだ。

 すでに中央官庁の一部では、OSSのOpenOffice.orgの導入が始まっているものの、「職員がダウンロードするにはIT担当セクションの認証・許可が必要」とする内規の取り扱いが普及への課題となりそうだ。オープンソースソフトウェア協会(OSSAJ)は「結果として、LinuxベースのサーバーにOpenOffice.orgをインストールする動きが強まる」とみる。

 関係筋の話を総合すると、経済産業省はIBM、サン・マイクロをはじめ主要なプラットフォーム・メーカーと協議を進め、ODF採用が日米貿易摩擦に発展しないことを確認するとともに、情報処理推進機構(IPA)など関係機関のプロジェクトでOSSベースのサーバー、シンクライアントによる全体最適化システムのモデル形成を準備している。また日本情報処理開発協会(JIPDEC)を通じて公共機関における電子文書交換フォーマットのあり方を調査しており、来年3月末をめどに報告書をまとめる。

 地方公共団体に直接的な影響力はないが、01年度からスタートした「職員1人1台のPC」が来年度以後、市町村や公立教育機関に設置されている約1000万台のパソコンがリプレース期を迎えること、来年1月にマイクロソフトの次期OS「Vista」がリリースされることなどの諸条件から、「電子自治体システムでもODF採用が進む」との見解を示している。

 ODFをサポートするソフトウェアとしては、サン・マイクロの「StarOffice8」、OSSの「OpenOffice.org 2.0(Oo2)」があり、ジャストシステムも日本語ワープロ「一太郎」の次期バージョンでODFをサポートすることを表明、統合XML開発/実効環境「xfy」について米IBM社と提携している。一方、マイクロソフトはMS-Office2007でサードパーティのツールを通してサポートすることを表明、Office Open XMLを国際標準として提唱している。

 しかし、Open XMLはマイクロソフトのオリジナルな文書フォーマットであり、現在公開されている仕様書は1900ページ(14.5MB)もあって、700ページ(3MB)のODFと比べサードパーティが同仕様を導入するのに困難を伴うことからも、Open XML陣営が劣勢とみる向きが多い。