【上海発】3月24日、ネットワーク機器メーカーの米スリーコムは、同社と華為科技(ファーウェイ、以下「華為」)の合弁会社ファーウェイスリーコムにおける華為の持ち分49%の株を8.82億ドルで買収することを中国政府が承認したと表明した。この取引は3月までに終結する見込みだ。スリーコムは今回の合弁会社買収により、何を得て何を失うのだろうか。

 ファーウェイスリーコムの貢献により、スリーコムは第3四半期で売り上げが伸び、今期の赤字を大幅に縮小することができる見通しだ。今年2月には、社名がファーウェイスリーコムからH3Cに変更され、ロゴも変わった。社名変更は、同社の性質が外資企業的になったことを意味し、両社の「政略結婚」はWin-winの結果に終わったかのようにみえるが…。

 そもそも華為とスリーコムの「縁」は、シスコシステムズと華為の間の訴訟事件から始まったとされる。2003年1月23日、ネットワーク設備メーカー大手のシスコシステムズは、特許権侵害を理由に華為を米国テキサス州マーシャル地方裁判所に訴えた。結局、この訴訟は和解に終わったが、国際市場に進出しようとしていた華為が出端をくじかれたことには間違いない。03年3月29日、華為は、スリーコムとデータ通信製品の研究開発・生産・販売を行う合弁会社を設立することを発表、11月に合弁会社(=ファーウェイスリーコム)が正式に設立された。

 ファーウェイスリーコムはスリーコムのブランドや販売ネットワークを利用し海外市場に進出し、シスコシステムズとの正面衝突をうまく避けることができた。この提携は、競争力を失いつつあり、ハイエンド製品ラインを渇望していた当時のスリーコムにとっても、願ってもないことだったと推測される。

 ただ、夫婦でも喧嘩するように、その後、両社の間にひびが入った。華為が欧州でシーメンス、北米でノーテルとの提携プロジェクトを発表したことで、スリーコムは「不愉快」な思いをしたのだろう。2年後の05年11月2日に、スリーコムは2800万ドルで華為から2%分の株を買収し、51%で筆頭株主となることを発表した。06年9月からは、スリーコムは支配株主にとどまらず、さらにファーウェイスリーコムを100%子会社にするという噂が出てきた。11月に、スリーコムは買収手続きを始めた。契約によって相手も応札する権限があるので、華為も国際的な基金と連携して競売した。11月29日には競争が一段落して、華為はスリーコムの買収値段を受け、ファーウェイスリーコムを譲渡することを発表。ここに至って、両社の「政略結婚」が破綻したことが明らかになった。

 実は、スリーコムにとって合弁会社は死守せざるを得ないものだった。今回の合弁解消で最大の不安要素となるのは、技術と中国の国内販売ネットワークを持っているパートナーがいなくなったことだ。このような心配は株式市場に伝わり、スリーコムの株価は10%ほど下がったそうだ。

 一方、華為にとっても、スリーコムとの合弁の解消は痛みがあるはずだ。まずは、スリーコムという新しい競争相手に直面しなければならない。特に、IPデータ通信分野では、H3Cの主力のほとんどは華為から異動した人たちだ。敵でもあり、友でもあり、頭が痛いことだろう。また、エンタープライズ市場、IPデータ通信市場に参入できないため、シスコシステムズに漁夫の利を得させることになるわけだ。海外市場開発の面で重要なパートナーを失った華為の国際化路線に、どのような将来が待ち受けているのだろうか。
魏鋒(ウェイ・フェン=ACCS上海事務所所長、shanghai@accsjp.or.jp)