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次々と花開く「SaaSビジネス」

2007/09/03 22:20

週刊BCN 2007年09月03日vol.1201掲載

 SaaS(サービス型ソフトウェア)型のサービスやコンサルティング、セキュリティなどインフラ提供が花開き始めている。既存のビジネスにSaaS型のサービスを付加したり、SaaS専業として業務アプリケーションの付属サービスを生業とするベンダーが登場している。今までのクライアント/サーバー環境やASP型ではなし得なかった新たな付加価値の提供が、SaaSの登場で可能になっている。

NRI SaaS支援本格化に動く OSS基盤でコスト抑制

 野村総合研究所(NRI)は、オープンソースソフト(OSS)を活用したSaaS支援に力を入れる。SaaSは利用者の増加にともないシステムを拡張し続けるビジネス形態であるため、有償のOSやミドルウェアではコストがかさむ課題があった。NRIでは、OSSを活用することでコストを低く抑え、利用者が増えてもSaaSベンダーが利益を確保しやすいシステム基盤を提供する。

 SIerやISVが相次いでSaaSビジネスに参入するなか、利用者が増えても維持コストが抑制しやすく、拡張性も高いOSS基盤への関心度が高まっている。しかし、OSS基盤を構築運用できる体力、技術力があるベンダーは限られており、規模の小さいISVなどは本業である業務アプリケーションの開発に経営リソースを集中したいと考える傾向も強い。こうしたことから、SaaS型アプリケーションに「OSS基盤を採用したいとする引き合いが昨年あたりから増えている」(寺田雄一・オープンソースソリューションセンター上級テクニカルエンジニア)という。

 NRIではOSS基盤の技術支援や自社のデータセンター設備の貸し出し、運用管理などを一括して提供するサービス「OpenStandia(オープンスタンディア)」を軸に、SIerやISVの需要の取り込みに力を入れる。今年5月にはERP(統合基幹業務システム)ベンダーのガイアがOpenStandiaを基盤としてSaaS型ERPサービスを開始。SaaS型CRM(顧客情報管理システム)大手のセールスフォース・ドットコムと連携するなど積極的なビジネス展開に乗り出している。

 今後はSaaS型アプリケーション基盤に適したOSS基盤の種類を増やしたり、拡張性を高める仮想化技術の採用を検討するなどして、ビジネスの効率化に努める。最終的にはSIerやISVが展開するSaaSビジネスのコスト競争力の向上にもつながる。

 現状ではOSSに関する技術支援やデータセンター設備の貸し出しなどを含めて数十社の利用者数にとどまるが、SaaS関連の追い風もあることから、今後1年間で100社程度に増える見通しを立てている。

ビズソフト 採用管理ソフトをSaaSで提供 OBCの奉行シリーズと初連携

 オービックビジネスコンサルタント(OBC)子会社でソフトウェア会社のビズソフト(大島敦社長)は9月27日、中途社員やパート・アルバイトの募集・採用支援システム「採用奉行」をSaaSモデルで提供する。OBCの「奉行シリーズ」のユーザーのほか、多店舗展開する企業などを対象に、OBCの販売代理店などを通じて販売する。1年間で300社への導入を目指す。

 ビズソフトの「採用奉行」は、中途採用編とパート・アルバイト編の2製品。中途採用社員やパート・アルバイトの募集から選考プロセス、応募者の受付などの管理を、ネットワークを介しパソコンと携帯電話でできる。「複数の求人媒体を利用し、店舗にまたがる採用をする場合、どの応募者がどの選考段階にあるかといった進捗を一元管理するのは難しかった」(大島社長)と、他に無いソフトとして売り込む。

 「採用奉行」は、OBCの人事管理システム「人事奉行21Ver.Ⅳ」と連携可能で、採用者データや異動履歴、資格管理などができる。また、「OBCタイムレコーダ」や「就業奉行21Ver.Ⅳ」での勤怠管理、「給与奉行21Ver.Ⅳ」で給与・賞与処理から年末調整計算まで一元管理できる。ビズソフトがOBCの子会社になって以来、初めて奉行シリーズと連携するソフトとなる。

 価格は両編とも6か月契約で44万1000円。以降は3か月ごとに更新契約を結ぶ。これまでパッケージ形式で販売していたパートナーに配慮した。「SaaS型の従量課金制では、販社に即インセンティブを支払えない。6か月契約ならば、従来のパッケージ販売と変わらない販売形態がとれる」と、SaaS型の販売モデルが確立されるまでの“折衷型”として、パッケージ形式のインセンティブモデルを改良し、既存販社を利用して展開する。
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