4割の企業が被害に無頓着

 【北京発】8月9日に北京市で開催された「情報産業部知的財産センター」の調査報告会で、中国のソフトウェア市場と海賊版について議論が交わされた。海賊版の普及を食い止めるために中国政府も対策をとってはいるが、ユーザーサイドとの認識のずれは大きく、決定的な効果が現れにくい構造が明らかになった。

 中国のソフトウェア産業は順調な伸びを示しており、2005年に683億元(約1兆245億円)だった市場規模は06年に814億元(約1兆2210億円)となり、今年は1000億元(1兆5000億円)を超えると予想されている。しかし、市場で流通しているソフトは外国製品の割合が高く、OSに限ってみれば中国製ソフトのシェアはわずか8%に過ぎない。アプリケーションソフトは70.3%と高いものの、組み込みソフトでは8.2%にとどまる。

 こうした状況を打破して国産ソフトの普及を促すためには、中国政府による産業政策および法制度の整備が必要不可欠となる。中国のソフトウェア関連法は、次の3つに分類できる。1つは立法環境。世界的な流れに歩調を合わせるべく制度の拡充が図られており、すでに「コンピュータソフトウェア保護条例(計算機軟件保護条例)」「情報ネットワーク伝播権保護条例(信息網絡伝播権保護条例)」「コンピュータソフトウェア著作権登記規則(計算機軟件著作権登記弁法)」が施行されているほか、「税関法(海関法)」や「契約法(合同法)」による保護も行われている。

 2つめは、司法保護環境である。知的財産を扱う法廷の開設ならびに専門官の配置を進め、最新の司法解釈を速やかに発表することとしている。3つめは、知的財産権の行政保護環境である。これについては、情報産業部などが06年3月30日に「正規版プリインストールソフトに関する問題について」を発布し、同年6月24日には国家版権局などが「企業の正規版ソフトウェア使用を進めるための実施案」を公布。企業対象という限定つきではあるが、正規版の使用を明確に求めたものである。

 しかし、情報産業部知的財産センターの趙天武主任は、「法制度の整備を進めるだけでなく、企業側の意識改革も必要だ」とする。海賊版の普及を食い止めるためには、社会全体で取り組むことが不可欠となるからだ。

 情報産業部知的財産センターの調査によれば、政府が企業に対し正規版ソフトウェアの使用を呼びかけていることを知っているのは調査対象者の約半数に過ぎず、しかもソフトウェア企業の23%が知的財産権の管理をしていないという実態が浮かび上がった。企業内に知的財産チームを設けているのはわずか6.8%である。

 企業が制度として知的財産の管理に踏み切れない理由として、「重要性の認識が甘い」(84.1%)が最も多く、次いで「知的財産の分かる人材が不足」(68.2%)、「資金不足」(47.7%)などとなっている。つまり、ある程度の認識は持っているものの、実際に管理するとなれば問題が多くて二の足を踏むという状況である。

 また、海賊版の被害に遭ったらどうするかとの質問に対しては、61.6%の企業が「積極的に権利を保護するための対処を講じる」とした。逆にいえば、残る約4割もの企業が「特に対処は講じない」としている結果こそ注目すべきであろう。「そもそも必要ない」「効果が見込めない」がその理由として多くあげられている実態に、意識改革という難問が浮かび上がる。
 齋藤浩一(サーチナ総合研究所主任研究員)