アドビシステムズ(ギャレット・イルグ社長)は、ワークフローシステムなど“文書を流通・運用”する分野での営業を強化する。近年、特定ベンダーに依存しないODF(オープンドキュメントフォーマット)が台頭する機運が高まっており、従来から強みとしてきたアドビの文書フォーマット「PDF」の役割や位置づけが曖昧になるケースがみられた。同社はPDFおよびPDFを作成管理するソフト「Acrobat(アクロバット)」の営業ターゲットを改めて明確化することでビジネスの拡大を目指す。

 アドビはPDFを“文書を最終的に流通・運用するためのフォーマット”と位置づけ、主にワークフローシステム上で流通する文書形式として売り込みをかける。ここにきて官公庁を中心にODFなど特定ベンダーに依存しない文書フォーマットを採用する動きが現れ、「ODFと競合する存在」(関係者)とみられることもあった。

 これに危機感を覚えたアドビでは、ODFなどとの役割の違いをより明確化することで、PDFの存在空間を引き続き拡大させていく考え。具体的には、ワープロや表計算ソフト、CADソフトなどの各種アプリケーションソフトを“作成ツール”と位置づける。一方でPDFを文書を流通・運用させる役割をメインに担わせることで、「PDFをより上位のレイヤに位置づける」(大矢博文・Acrobat営業部長)戦略を展開する。

 表計算など、アプリケーションソフトで作成したファイルを“中間ファイル”とし、PDFは流通・運用するための“最終ファイル”に位置づける。「ODFは中間ファイルを置き換えるフォーマット」であり、最終的な流通形態であるPDFとはレイヤを異にすることで無用な競合を避ける。実際、中間ファイルは作成者の手元に残し、PDFはワークフローシステムなどで流通・運用ためのフォーマットとして活用するケースは、「官民の市場を問わず広まっている」という。

 ワークフローシステムなどで文書を流通・運用する際、ファイル閲覧に不可欠なアプリケーションソフトを個々のクライアントパソコンにインストールしなければならない点が大きな課題として残っていた。ファイルを作成したワープロや表計算ソフト、CADソフトがパソコンに入っていなければ閲覧できないケースが多い。この点、PDFは無料で提供される閲覧ソフトさえあれば、誰でも閲覧できる。

 こうした需要をさらに引き出していくため、今年9月1日付でAcrobat専任の営業組織を新設。顧客企業やSIerなどビジネスパートナーにPDFの役割や特性を浸透させる活動に力を入れている。また、自社の文書管理ソフトの「LiveCycle(ライブサイクル)」と連動させることでセキュリティを大幅に高める仕組みの拡販にも努める。こうした施策により来年度(2008年11月期)、国内におけるAcrobat関連の売上高を今年度比で1.2-1.3倍に高める。