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■中国ゲーム業界の動き■米国での上場から1か月 “ゲームの雄”を襲うアクシデント

2008/01/14 20:50

週刊BCN 2008年01月14日vol.1218掲載

投資家の理解得るのに苦心惨憺

重要情報隠ぺいで訴訟も

 【上海発】本紙2007年11月26日号で既報した通り、オンラインゲーム大手の「上海巨人網絡科技有限会社」(以下、ジャイアントネットワークス)が07年11月1日に米国ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した。あれから1か月が経過したところで、同社をめぐるいくつかの出来事を紹介する。

 まずは、同社の株価が大幅に下がった件。上場当日は、高値20.46ドル、終値18.23ドルだったが、第3四半期の財務報告書が発表された11月20日には、11.10ドルにまで終値を下げている。この四半期において、同社の売上高、粗利益、純利益は前年同期と比べてそれぞれ146.2%、152.8%、152.2%と成長したが、平均同時オンラインユーザー数および最高同時オンラインユーザー数は第2四半期よりそれぞれ6.6%、17.2%減少した。この指標の低下が、株価の急落を引き起こした要因だ。

 これに対してジャイアントネットワークスは、「打銭公司」への対処でゲームのルールを変更したためとして、自社の成長につながると強調している。「打銭公司」とは、プロのゲームプレーヤーを雇用し、多額のサイバーマネーを儲け、他のユーザーに売却する会社を指す。しかし、海外の投資家には「打銭公司」のことが分からないからか、12月10日には株価は13ドルに戻ったものの、IPO(新規株式公開)の公募価格、15.5ドルには及ばない水準にとどまっている。

 次に、ソースコード漏えい事件。06年、王予川というプログラマがジャイアントネットワークスの開発部門を退社した際、同社の商品「征途」のサーバーやクライアントプログラムのソースコードをCDに焼いて持ち出した。07年3月、王はネットでこれを出品し、すぐに買い手を見つけて売却した。その後、王も買い手も当局に逮捕され、有罪判決が下された。ジャイアントネットワークスは裁判では勝ったが、内部管理の甘さが問題視されている。

 三つめは、上場前、故意に事実を隠したとして米国で訴えられた事件だ。11月27日、ジャイアントネットワークスのトップの1人が、上場前に株価を左右する可能性のある重要な情報を隠したことで提訴されたという。原告の米国法律事務所は、ジャイアントネットワークスが「米国証券法」に違反していると指摘し、同社の株を購入した投資家を代表して訴訟を起こしたと説明している。ジャイアントネットワークスはこの訴訟事件に対して積極的に対処していくと明言する一方、IPO説明書に記載しているデータの正確性を主張している。この事件は、明らかに同社の株価に影響している。

 ジャイアントネットワークスが上場直後に体験した一連の出来事は、中国のオンラインゲーム業界にとって教訓になったはずだ。
 魏鋒(ウェイ・フェン=ACCS上海事務所所長、shanghai@accsjp.or.jp)
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