「インターナショナルCES2008」で超薄型テレビと同じく来場者の関心を引いたのが、デジタルビデオカメラや次世代DVDからフルハイビジョン(フルHD)の映像を無線で薄型テレビに伝送する技術。次世代のリンク機能ともいうべき、この技術が実用化すれば、デジタル家電同士をHDMIケーブルなどで接続する必要がなくなる。近い将来、ユーザーは配線の問題に悩まされずに済むことになりそうだ。

 松下電器産業はCESの基調講演でフルHDのワイヤレスシステムを発表。集まった観客に大きくアピールした。松下は、デジタルビデオカメラをワイヤレス機能内蔵のワゴンに置くと、録画した映像が2m以上先にある薄型テレビに表示されるデモを披露。その様子を見た観客から驚きの声があがった。

 松下のフルHD無線システムで使用されているのは、「ワイヤレスHD」と呼ばれる通信技術。通信距離は屋内10m程度で、最大4Gbps(ギガビット/秒)でやりとりが可能だ。周波数帯は世界的に免許が不要な60GHz帯を使用する。米通信ベンチャーのサイビーム(カリフォルニア州)を中心に松下、ソニー、東芝、韓国サムスン電子などが参加する規格団体「ワイヤレスHDコンソーシアム」が仕様をまとめた。

 松下はワイヤレスHDで、サイビームが開発した「ビーム・ステアリング技術」を採用。同技術は、機器の間の空間に人がいても自動的に回避して電波を送ることが可能だ。そのため、テレビと機器の間に人がいたり、障害物があっても確実に映像を伝送できるという。基調講演でシステムを紹介した坂本俊弘・パナソニックAVCネットワークス社社長は「2009年にはみなさんにご提供できる」と、実用化に自信をみせた。

 東芝も、「ワイヤレスHD」を利用した「次世代レグザリンク」をCESで公開した。次世代レグザリンクは、東芝が薄型テレビ「REGZA(レグザ)」で採用しているHDMIケーブルを使ったリンク機能「レグザリンク」の無線版技術に当たるものだ。

 東芝のブースではワイヤレスHD対応の無線回路を搭載した次世代DVDのHD DVDプレーヤーやノートPCを、HDMIケーブルを使うことなく、テレビのリモコン1つで操作できるデモを公開。来場者の反応も上々だったことから、「面倒な配線が不要なワイヤレスHDで、ユーザーがリンク機能を身近に感じて、もっと使ってもらえるようになる」(東芝)と期待を寄せる。

 一方、ソニーは独自の近接無線転送技術である「トランスファージェット(TransferJet)」を展示した。携帯電話やデジタルカメラなどをかざすだけでパソコンや薄型テレビに画像や映像を瞬時に転送できる技術だ。

 ブースではトランスファージェット対応の無線回路を搭載したデジタルカメラを同じく回路を搭載したストレージの上に置くと、カメラの画像全てを瞬時に転送・保存し、薄型テレビにインデックス表示するデモが行われた。

 通信速度は最大560Mbps(メガビット/秒)。周波数は4.48GHz帯を使用する。無線は1m程度まで飛ばすことが可能だが、混信を避けるために通信距離を3cm以内と極端に短く抑えた。アンテナも、垂直方向のみの電波を受信する特殊なタイプを使用している。

 そのため、距離は短いが安定した通信が可能で、「おサイフケータイ」のように、通信したい機器同士を直接かざすだけで送受信ができるという、直感的な操作を実現した。接続やアクセスポイントの面倒な設定なども不要だという。

 トランスファージェットは、ソニーの情報技術研究所通信研究部が開発した。開発のチームリーダーを務めた岩崎潤・情報技術研究所通信研究部R&D推進室通信システム担当部長・室長は「無線を使って、いろいろな機器で誰でも簡単に高画質の世界を楽しめるようにしたいと思った」と、その狙いを説明する。

 ソニーでは09年度での実用化を見込んでおり、その際には薄型テレビ、デジタルカメラ、携帯電話、パソコン、ビデオカメラなどデジタル機器で「全面展開していく」(岩崎担当部長・室長)計画。また、技術仕様を公開し、他社にも利用してもらうことで技術の普及を図りたい考えだ。