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プライベートストック 携帯SaaSで作業をリアル記録 QRコードで簡単に登録

2008/05/05 21:00

週刊BCN 2008年05月05日vol.1234掲載

ASP事業者と協業を拡大へ

 ITベンチャーのPrivateStock(プライベートストック、鈴木賢一社長)は個人所有でQRコード読み取り機能付きの携帯電話を使って業務効率化を図るモバイルSaaS(Software as a Service)ビジネスを拡大している。初期投資ゼロでID・パスワード付与代金が月額1万円以下(20 ID以下)で導入可能なため、中小の介護、物流、運輸、建築など社外に出て作業し、その実績履歴を管理する業務の伴う企業向けに浸透しつつある。介護事業者向けにASP提供するITベンダーなどと提携して導入数を増やす活動を本格化する。

 同社が現在最も注目している領域は中小の介護事業者向け。訪問介護の偽装派遣問題などを受け、サービス提供記録を正確に残すことに関心が高まっているためだ。介護事業者は派遣者のヘルパーなどが記した実施記録の紙日報を月報にまとめて提出する必要がある。この記録を電子化して集約するASPサービスはあるものの、手入力作業が煩雑。また、ヘルパーが実施時間を正確に記録したり、把握するのは困難さが伴う。

 今回のSaaSサービスはここに着眼し、携帯電話をフル活用するサービスとして考案した。この仕組みを使うと、作業の効率化が図れる。例えば、介護の現場でユーザー登録したヘルパーは、介護を受ける人の自宅に訪問し、壁に貼られたQRコードつきのカレンダーを携帯電話で読み取ってログインし、作業項目を見てフォームに沿って作業を実施することができる。作業が終了した項目からチェックボックスに印を付けるだけで、サービス提供の時間・内容がすべてリアルタイムに管理パソコンに記録・履歴される。特記事項があれば、携帯電話でメールするように打ち込めばいいだけだ。

 大半の介護事業者は中小規模で、複数掛け持ちの派遣ヘルパーに頼っている。このため、誰でも使えるITでないと導入は難しい。また、ヘルパーが記述したサービス記録を集約して報酬額を請求する作業負担は過大。「作業記録を手入力するASPはある。しかし、介護作業は中小でも膨大。これをゼロからシステム開発すると、IT投資が大きくなる。それらすべてを携帯電話を利用したSaaSで解決した」(鈴木社長)と、介護事業者にASPサービスを提供するITベンダーと連携し、作業記録のデータとASPデータをマッシュアップする提案などを拡大する計画だ。

 介護事業者向けSaaSは、すでに特定非営利活動法人「あおば」(東京・中野区)に導入した。QRコードを使ったこの仕組みは他の業種にも応用され、同区内の運送会社、富士輸送で物流管理システムとして利用されている。

 「当社の仕組みは携帯電話の通信キャリアを問わず利用でき、設備投資はパソコンとネットワーク接続さえあれば不要。中小工務店など建築現場の作業記録管理を携帯電話のカメラ機能を利用して施主と情報交換したり、派遣労働者の作業履歴を取るなど、利用方法は多様に考えられる」(鈴木社長)とみており、多領域で利用の可能性を探るためSIerなどとのアライアンスを深める方針だ。
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