ハイタッチなど代理店支援も

 シスコシステムズが「PSS(プロダクト・セールス・スペシャリスト)」と呼ばれる専門要員を組織化、同要員の人員を3倍程度に増やして市場開拓に乗り出した。この専門要員は、ハイタッチ営業などで販売代理店の支援も行う。ハードウェアでいえば価格下落で市場が成熟したとの見方が強い国内ネットワーク機器市場。王者に君臨する同社が、新領域の創造で活性化を図ろうとしているわけだ。

 「PSS」の業務は、昨年度(2008年7月期)まで営業部門のなかでセールス担当者を支援するのがメインだった。現在でも営業支援は手がけているが、直接的に与えられている使命は“新市場の創造”。同社製品で市場を開拓していくことを主要業務とする。同組織の立ち上げを決断したのはエンタープライズ&コマーシャル事業を担当する平井康文・副社長だ。

 具体的には、テクノロジーの進化で実現できるネットワーク機器の可能性をユーザー企業や販売代理店などに訴えていくこと。スイッチをはじめ、数多くある同社製品を組み合わせれば、必ずニーズに応えられることをアピールする。ソリューションとして体系化することも行っていくようだ。販売のアプローチは、ユーザー企業によるネットワークインフラのリプレース時期を狙い、IP電話やUC(ユニファイドコミュニケーション)などに関連した製品・サービスを提案。次世代ウェブの点では、ネットワークインフラとマッシュアップなどアプリケーションを連係させた“コラボレーション”も提供していく方針だ。平井副社長は、「ネットワークそのものが変革しており、進化を遂げている。このような状況をユーザー企業に訴えていかなければ、国内市場の成長はあり得ない」と判断している。

 ユーザー企業に対して直接的な提案を行うものの、システム構築など実際にビジネスを手がけるのはSIerやNIerといった同社の販売代理店となる。平井副社長は、「あくまでも販売パートナーがいるからこそ、国内市場ではビジネスが成り立つ」としている。販売代理店に対して、課題や強化策を聞き出して共同ワークショップでソリューションとして体系化することも実施。製造やデータセンター、UCなど販売代理店の強みを明確化することでユーザー企業へのアプローチに漏れがない体制も整える。

 アプリケーションサービスなどと異なって、ネットワークインフラは企業内システムの“裏”で動いていることから、ユーザー企業がネットワークの付加価値の有無を認識するのは難しい。ハードウェアに関していえば、「できるだけ投資を抑えたい」というニーズが主流のようだ。そのため、ネットワーク機器を販売するベンダーにとっては低価格競争で利益を圧縮せざるを得ず、国内市場をみると結果的にネットワークビジネスが儲からないという構造になっている模様。なかでも、L2/L3の領域であるスイッチは市場の急激な伸びが期待できない状況だ。しかし、「あくまでもネットワークのコアとなるのはスイッチやルータ。このビジネスを成り立たせるために、新しく掲げたコンセプトを、ユーザーに理解してもらえるかどうかがカギ」というのが同社の考えだ。中核製品の市場を活性化させることが同社の狙いとなる。こうした取り組みで、「今年度は2ケタ成長を狙える」と自信をみせている。

平井康文 副社長

 今年3月、シスコシステムズ副社長に就任。一般企業をはじめ、官公庁や自治体、医療機関、教育機関など営業全般を担当するエンタープライズ&コマーシャル事業を統括している。副社長に就任してから、販売代理店やユーザー企業を自分の足で回っている。そのなかで課題に挙がったものを具現化するため、今年度から「PSS」を組織化した。

 シスコシステムズに移る前は、マイクロソフトの執行役専務として大手法人事業部門を担当。その前は、日本IBMで20年以上に渡って多くの事業に携わっていた。コンピュータ業界が長かっただけに、ネットワークの進化を見据えたシスコシステムズの新しいビジネス展開に注目が集まる。