デジタルコンテンツの世界では、量から質へと転換するサイクルが生まれつつある――。ソニー・デジタルエンタテインメント・サービス(福田淳社長)は、ネット上のコミュニティを通じてコンテンツ需要のすそ野が広がり、これがより良質なコンテンツを生み出す基盤になりつつあると指摘する。コンテンツをつくる側と消費する側がともに活性化することで市場が拡大。同社は、携帯電話向けのオリジナルコンテンツの販売を事業の柱としているが、「今後10年、引き続き市場は拡大する」と、手応えを感じている。

 モバイル向けコンテンツビジネスは、NTTドコモのiモードサービスが始まった1999年から本格的に拡大を始めた。総務省によれば、08年のモバイルコンテンツとモバイルeコマースビジネス市場は1兆3524億円にまで成長。「ユーザーは今後も増え続ける」と、ソニー・デジタルの福田社長は、持続的な成長が可能な分野だとみる。

 同社は今年で設立3年目。「経営は順調に軌道に乗り始めた」と話す。ここにきて目立つのが、ユーザー参加型メディア(CGM)の動きだ。こうしたコミュニティで活動するクリエーターが、プロとして活躍の領域を広めつつある。例えば、今夏放送のアニメ『化物語』のエンディング曲に、動画コミュニティのニコニコ動画で活躍するアーティスト集団「supercell」が起用され、ソニー・ミュージックレコーズからシングルCD『君の知らない物語』をリリース。オリコンチャート5位を記録するヒットとなった。

福田淳社長

 CGMコミュニティの立ち上がり期には、従来のパッケージメディアビジネスにマイナスになるのでは、と危惧する声があった。福田社長は、「コンテンツ販売とネット・CGM系の2系統は併存しうる。むしろCGMでコンテンツの作り手のすそ野が広がり、コンテンツの絶対量が拡大して、“量から質への転換”が起こりつつある時期」と分析する。質への転換とは、プロがつくるコンテンツとして有料で販売できるクオリティになることを指す。

 質の高いコンテンツを提供することで、クリエーターを目指す若者が増える効果も期待できる。「ネット上のコミュニティから次世代を担う若手クリエーターの発掘・育成に積極的に取り組むのは、われわれプロの重要な役割」(福田社長)と、ネットとコンテンツビジネスの相乗効果を狙う。(安藤章司)