ガートナー ジャパン(日高信彦社長)は、2011年の国内企業の情報通信技術(ICT)支出が、前年比2.5%減の22兆2790億円だったと発表した。2012年も景気の先行きが読みにくく、IT組織のリーダーは、経営層から引き続きICT支出の厳格なコントロールを求められるとみている。

 11年は、欧米先進国の経済低迷や国内市場の成熟化などの要因に加えて、東日本大震災とそれに起因する電力不足などの突発事象が国内企業のICT予算にネガティブな影響を与えたと分析。多くのIT組織のリーダーが、ICT支出の可視化と最適化を通じて抑制を断行したという。

 12年も、日本企業のICT支出に関する判断は厳しい局面が続くと予想。11年にITプロジェクトの延期・一時凍結を実施した大手企業のなかには、その反動から12年に支出増額を図るケースも散見されるが、そのような企業でも総額の上限は維持し、運用維持費をさらに削減した上で新規投資を捻出しており、総じてICT支出の強い回復を促す機会に乏しいとみる。

 ユーロ危機に連関した国内経済の不透明感や国内労働人口の逓減、海外拠点への設備投資のシフトといった状況は、国内ICT支出の抑制要因となる。また、企業の投資意欲を喚起させるICT製品・サービスも不足しているという。

 分野別では、11年の国内企業のハードウェアへの支出が、前年比10.1%減の1兆6321億円だった。ハードウェアには、サーバ、ストレージ、プリンタ/複写機/複合機(MFP)、PCを含み、11年はサーバーを除いたすべてのセグメントが1ケタ後半もしくは2ケタ減になると予測する。とくにPCへの支出は、震災や円高進行による需要・投資環境の悪化に加え、10年の景気対策による教育需要の拡大や企業のWindows XPへの駆け込み需要の反動を受け、20%近く減少する見通しだ。

 12年も弱含みは続くが、11年のような低迷状態からはひとまず脱却するとみており、前年比2.3%減となると予測。現在のハードウェア市場はすでに成熟市場で、ベンダーは製品改良などの努力は行っているものの、ユーザーの新たな購買意欲を強く刺激するには至っていない。こうした状況から脱却すべく、外資系ベンダーはサーバーやストレージなどの領域で、クラウドやビッグ・データを意識した新たなアーキテクチャにもとづくシステム製品を投入し始めていると指摘。12年は、多くのユーザーが、既存の製品に加え、こうした新たなシステム製品の存在を認識し、導入検討を開始する年になる可能性があるという。

 一方、11年の国内企業のソフトウェアへの支出は、前年比1.4%減の2兆197億円になった。震災後のユーザー企業の投資意欲の一時的な落ち込みや業績悪化で、各種プロジェクトの凍結や延期も目立ち、新規のソフトウェアに対する支出が減少したと分析する。しかし、データベースなどの成熟したインフラ・ソフトウェアでは、支出の多くが保守契約であることに加え、万が一の事態を想定して保守契約を打ち切ることに対する抵抗感が強く、支出額の縮小幅は比較的小さくなっているという。

 12年は、大手企業を中心に、パッケージ・アプリケーションの展開、統合などのプロジェクト計画への着手が徐々に進むと同時に、ビジネスのグローバル化に対応したアプリケーション基盤の構築やデータ統合の取り組みなども増え始めるとみる。また、モバイル・デバイスの業務活用ニーズは年々高まっており、モバイル向けアプリケーション、セキュリティ、運用管理ソフトウェアなどが徐々に台頭してくると予想。このほか、SAP、Oracle、IBM、Microsoftといったメガベンダーが、ソフトウェアのライセンスからより多くの収益を上げることができるよう見直しを進めていることもあり、12年の日本企業のソフトウェアに対する支出は、前年比2.2%増になるとみる。

 11年の国内企業のITサービスへの支出は、前年比2.0%減の9兆3295億円だった。ITサービスは企業のICT支出の約4割を占め、「製品保守」「コンサルティング」「開発/システム・インテグレーション (SI)」「運用・管理」「ビジネス・プロセス・アウトソーシング (BPO)」などで構成している。11年は、景況感の低迷による懸念から、ITサービスのほぼ全領域で支出の見直しが行われた。とくに製品需要に連動する「製品保守」や、新規プロジェクトの「コンサルティング」「開発・SI」への支出が削減された。「運用・管理」のアウトソーシングも、ニーズこそ堅調ながら、提供側にとってはコスト・リーダー優位の状況が顕著だったという。

 12年は、景気循環に呼応した投資再開がある程度期待できるものの、国内企業のITサービスへの支出は総額9兆3800億円と前年から微増にとどまると予測。リーマン・ショック後、目先の景況変動にとらわれず、継続的にITサービス支出の適正化に取り組むIT組織リーダーが増えているという。ベンダー選定・契約交渉時のイニシアチブの強化や、クラウドを含めたITサービス調達手段の多様化をてこに、国内では「適材・適所・適時・適額」のソーシング戦略志向が強まるとみる。

 11年の国内企業のテレコミュニケーションへの支出は、前年比0.9%減の5兆3381億円だった。テレコミュニケーションには、ルータやスイッチなどの企業向け通信機器、モバイルデバイス(スマートフォンを含む携帯電話端末)、ネットワーク・サービスを含む。11年は、注目されるモバイルデバイスへの支出が10年に比べ2%程度増加する反面、企業向け通信機器への支出が7%程度減少する見込み。しかし、このテレコミュニケーションへの支出の大部分を占めるネットワーク・サービスが比較的安定的に推移しているおり、11年の減少幅は全体で見ると0.9%にとどまると予測する。

 12年は、11年同様、ネットワーク・サービスへの支出が安定的に推移するとみており、テレコミュニケーション市場全体への支出は0.7%増加するという。

 11年の国内企業のIT部門内人件費は、3.1%減の3兆9597億円だった。この支出には、情報システム部門の要員に対する給与・残業代・賞与・福利厚生費などを含む。11年は、残業規制に加えて情報システム部門の要員削減を実施した企業も多く、IT組織自体にとっても厳しい1年だったという。

 12年についても、タイの洪水によるグローバル・サプライチェーンの中断や、ユーロ危機に起因する欧州経済の縮小によって、欧州との取引割合が大きい企業を中心に厳しい状態が続くとみる。12年の戦略をたずねた調査では、約60%が「コスト削減」にフォーカスすると回答しており、そのうち半数以上がIT要員の削減を含んだ「IT部門主体で実行できるコスト削減」にフォーカスしている。これらを総合して、12年のIT部門内人件費は、さらに2.7%減少すると予測している。(信澤健太)