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ガートナー、2011年度の国内企業のIT投資動向を発表、新規投資は増加傾向

2011/02/02 10:22

 ガートナージャパン(日高信彦社長)が、国内企業のIT投資動向に関する調査結果を発表した。

 それによると、2010年度のIT投資額は2009年度とほぼ同じだったが、2011年度は全体で1.0%程度の緩やかな増加傾向をみせると予測。既存システムの維持費は減るものの、新規投資に関しては比較的強い増加傾向にあるとしている。

 2010年度と2011年度の新規・追加投資の主要分野の調査によると、サーバーの仮想化とモバイル環境の整備に対するニーズが拡大するほか、アプリケーションへの投資が再開する傾向。とくに従業員数2000人以上の大企業でのニーズの高まりが鮮明に表れ、IFRS対応や運用管理ソフトウェアへの投資意欲も高まっているという。

 サーバーの仮想化は調査対象の企業全体で、11%(2008年調査)、17%(2009年調査)、19%(2010年調査)と年を追うごとに選択率が高くなっており、従業員数2000人以上の大企業では29%(2008年調査)から43%(2010年調査)にまで拡大した。大企業に加えて中堅企業にも浸透しており、利用率は従業員数500人から1999人規模の企業で40%を超える。従業員数2000人以上の大企業では70%近くとなっている。

 ただし、全サーバーにおける仮想環境の比率はまだ低いのが実態で、インフラ・コストの削減ソリューションとして新規・追加のニーズが拡大しているという。

 また、サーバーの仮想化の普及に伴い、物理環境との混在で運用管理が複雑化しており、運用管理ソフトのニーズが大企業で再び高まってきている。

 モバイル環境整備のニーズは、2008年と2009年の調査では全体で5%から6%だったが、2010年の調査では倍の10%にまで拡大した。とくに従業員数2000人以上の大企業では、2008年と2009年の調査ではともに7%だったが、2010年の調査では18%に跳ね上がっている。モバイル端末の採用だけでなく、セキュリティ管理やアプリケーションのニーズ、データ通信量の拡大にもつながるとみている。

 アプリケーションは、調査対象の企業全体でニーズが拡大。とりわけ再開傾向が強いのは、従業員数2000人以上の大企業だ。パッケージ・アプリケーションは、19%(2009年調査)から28%(2010年調査)に、アプリケーション開発の外部委託は14%(2009年調査)から22%(2010年調査)にニーズが拡大してる。

 IFRS対応に関しても、9%(2009年調査)から25%(2010年調査)にまで拡大しており、財務・会計管理アプリケーションの改修や、ERPの導入、アップグレードに結びつく可能性がある。

 向こう3年間に重点投資すべきアプリケーションとしては、従業員数2000人以上の大企業で、財務・会計管理、購買・調達管理、営業支援・SFA、マーケティング支援、ビジネス・インテリジェンス(BI)、SCMへの投資意欲が大きく高まっている。

 2008年度後半から2010年度にかけて、アプリケーションの新規・追加・更新・改修への投資を最小限にとどめたり、延期したりしてきた企業が、2011年度以降にアプリケーションへの投資を再開しようとする傾向が明らかになった。

 クラウド・サービスは、関心は極めて高いものの、実需となるとまだ大きいとはいえず、費用対効果やセキュリティなど、多くの懸念事項を払拭しない限り、近い将来に市場に大きな影響をもたらすほどのニーズは出てこないとみている。

 クラウド・サービスが日本の市場でIT支出額に比較的大きく影響し始めるのは、2014年以降と予測。インフラ取得やシステム運用の支出に対しては市場を縮小させる方向に働き、インテグレーション・ビジネスはクラウド環境の増加で一時的に拡大する可能性があるとみている。

 Windows 7は、2010年の調査時点で台数比率(アンケート回答企業のクライアントPC総台数におけるWindows 7搭載PCの占める比率)はわずか1%にとどまり、企業ではまだ試用段階にあることが明らかになった。一方で、調査時点から1年後の計画では、この比率は11%になるという結果が出ている。

 このほか、65%の企業が2012年12月までにWindows 7への移行を予定していると回答しており、企業におけるWindows 7への移行は2011年から徐々に本格化していく。

 調査は、日本全国の従業員数20人以上のITユーザー企業からランダムに約5000社を抽出し、情報システム部門責任者を中心に回答を得た。(信澤健太)

2010年度および2011年度の新規・追加投資の主要分野(複数選択可)
注1:2010年度から2011年度にかけての新規・追加投資の主要な案件について、上記選択肢から複数回答可として選択してもらった調査結果である。数値はすべて805社の有効回答企業による選択率を示す。
注2:図の赤い矢印は2008年と2009年調査に比べて選択率(ニーズ)が拡大した分野、オレンジの矢印は、話題性や期待の割にニーズが小さいクラウド関連の分野を示す。

出典:ガートナー/調査:2010年11月
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ガートナージャパン=http://www.gartner.co.jp/