アビームコンサルティング(岩澤俊典社長)は、リサーチレポート「日本型シェアードサービスの再生と進化」に関する報道関係者向けの説明会を開催した。調査結果からは、グループ/グローバルの間接業務を切り出して集約・最適化を図るシェアードサービスが、十分に導入効果を発揮できていない現状が明らかになった。

 「日本型シェアードサービスの再生と進化」は、日本の大手企業を対象にシェアードサービスの現状と課題、今後の方向性を調査し、まとめたレポート。連結売上高1000億円以上または従業員数2000人以上の東証一部上場企業を中心とする1000社の本社経営企画担当責任者、シェアードサービス主管部門責任者、シェアードサービス担当責任者から回答を得た。有効回答は68社で、うちシェアードサービスセンター(SSC)を導入しているのは52社だった。

 大手日本企業の76%はシェアードサービスを導入済みで、業務別では人事・経理・財務に集中。一方で、シェアードサービスの目的を達成できた企業は約半数にとどまった。目的達成のために重視した施策と今後重視する施策のトップは「業務の標準化」だった。 

シェアードサービスの導入状況

シェアードサービスの導入割合(業務領域別)

 この結果を受けて、アビームコンサルティング経営戦略研究センターの木村公昭ディレクターは、「『再生』と『進化』の2段階で日本型シェアードサービスを変革する必要がある」と提言。SSC再生のカギは、標準化・共通化の徹底にあるとした。 

アビームコンサルティングの木村公昭ディレクター

 その標準化・共通化を阻害する「三つの壁」が、間接業務の標準化に対する経営トップの「理解の壁」、人的リソースの投資や現場での抵抗など「コミットメントの壁」、プロセス改革やチェンジマネジメントのスキルが不足する「能力の壁」。そして、バックオフォス部門内部で蓄積した知識・ノウハウと、異なる組織・専門分野の知見「異質の知」をうまく活用するのが有効だとした。

 「異質の知」は、ファクトリーアプローチの導入、他のSSCとの合併・統合、コンサルタント/BPOベンダーの活用の三つで構成する。ファクトリーアプローチは、「生産工程の標準化やデータの一元化を進めている製造部門が蓄積しているノウハウやスキルをSCCに活用するものだ」と紹介した。

 標準化・共通化を徹底し、再生を果たしたシェアードサービスが次に目指すべきは、「ワールドクラスの効率化だ」と指摘。「業務軸」(オペレーショナル・エクセレンスの実現)と「地域軸」(シェアードサービスのグローバル展開)の両面で、さらなる進化を遂げる必要があるとした。

 「業務軸」での進化に向けては、高度なマネジメント業務までもプロセス化し、オペレーション業務のなかで外製化できる部分については「ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)を活用すべき」と強調。すでに、40%以上の企業がアウトソーシングを活用し、さらに「活用範囲を拡大したい」と考えている比率が15%に上るデータを明らかにした。

 一方、「地域軸」での進化に向けては、「シェアードサービスを統括する『マザーセンター』を設置し、シェアードサービスに関する戦略やポリシーの発信、標準化・共通化の推進、ノウハウやソリューションの提供、地域SSCのパフォーマンス管理を実施することが有効だ」とした。

 木村ディレクターは、先進的な欧米企業におけるSSC活用状況も紹介。1980年代にSSCの導入を開始し、90年代には海外にも展開する動きが拡大して、地域SSCを設置する企業が増加。近年はグローバルで業務を標準化してグローバルSSCを導入し、BPOも積極的に活用することで間接部門の人員を削減している企業がみられると説明した。

 また、バックオフィス業務をSSCに集約するなどの「シェアードサービスの導入」(フェーズ1)にはじまり、外部パートナーへの戦略的アウトソーシングなどに取り組む「革新的ビジネスモデルの確立」(フェーズ2)、IT主導のイノベーションなどを進める「俊敏性、柔軟性、変化の先読み」(フェーズ3)、ダイナミックな優先順位付けなどの「よりシンプルに、よりフラットに、より速く」(フェーズ4)までを実現している欧米企業の先進事例を紹介した。木村ディレクターは、「フェーズ3まで進んでいる日本企業は存在しない。先進的企業の一部がフェーズ2にある状況だ」と、日本企業の状況を語った。

 アビームコンサルティングは、日本型SSCの難しさを克服する「シェアードサービス再生プラン策定/実行支援サービス」を提供し、SSCの再生・進化を支援する。独自のフレームワーク通じて、再生プラン策定フェーズなど五つのフェーズと、推進戦略など五つの視点ごとに、タスクと成果物サンプルを整備している。プロセス&テクノロジー事業部経営改革セクターの澤田和幸プリンシパルは、「欧米型のトップダウン一辺倒のアプローチではなく、日本を取り巻くビジネス環境や経営上の特長を十分に理解したうえでサポートする」と述べた。(信澤健太)

アビームコンサルティングの澤田和幸プリンシパル