愛媛県と千葉県に本社を置く日本食研ホールディングス(大沢哲也社長)は、ホールディングス(持ち株会社)制への移行に合わせて、会計・人事システムの刷新に取り組んだ。アビームコンサルティングは、日本食研の要求に応え、6か月という短期間で「SAP ERP」の導入を果たした。
日本食研ホールディングス
会社概要:1971年10月、現会長の大沢一彦氏らが畜産加工研究所を設立。調味料や加工食品の販売・研究開発を手がける。持ち株会社として、グループの戦略立案と各種事業会社の統括管理機能を担う。
サービス提供会社:アビームコンサルティング
プロダクト名:SAP ERP
SAP ERP 会計・人事機能を導入したSERVE1プロジェクト

愛媛本社の敷地にあるKO宮殿工場。2006年に竣工した
日本食研ホールディングスの創業は1971年10月。現会長の大沢一彦氏が立ち上げた畜産加工研究所に由来する。現在は、家庭用と業務用に5000種類以上のブレンド調味料などを製造・販売。業務向けが事業全体の89%を占める。昨年度(2010年9月期)は連結売上高が790億円で、営業利益は62億円だった。
事業拡大を狙ってホールディングス制に移行したのは2009年10月。三つに分社化した。新グループ体制下で導入したのが「SAP ERP」だった。「分社化はしたものの、データ連携は人手に頼っていて信頼性に欠けていた。SAP ERPを導入することで、これを解消することを目指した。まずは、会計・人事管理から取りかかって、将来的には基幹システムを再構築することにした」。日本食研ホールディングスの家光隆一・経理部部長は、システム導入の経緯をこう語る。
二十年来利用していた会計システムは中小企業向けのパッケージで、「帳簿にデータを手入力し、税金を納めるためだけの申告書などを作成するものにとどまっていた」(家光部長)。これとは別に、一部で取り組んでいた管理会計もその大部分を人手に頼っていた。人事に関しても同じ悩みを抱えており、人事から経理への給与データの受け渡しは手作業だった。これらをシステムで一本化したいと考えた。
プロジェクトのキックオフは2010年4月。経理部と人事部を中心に、情報システム部を加えたメンバーは、年度が変わる10月1日までに新システムを稼働させることを目標に掲げた。RFP(提案依頼書)を提示していた複数のITベンダーのうち、アビームに白羽の矢を立てたのは、「まず第一にスピード感を求めていた」(古澤洋哉・情報システム部部長)という日本食研の要求に応えられる点が大きなポイントとなった。
プレゼンテーションを担当した沼田大輔・FMCセクタープロセス&テクノロジー事業部マネージャーの能力も信頼できるものと感じたという。「3段階で、20項目ぐらいの評価指標を設けた。そのなかには、ベンダー側の食品業界の実績やプロジェクトリーダーの人柄、導入コスト、ベンダー独自の手法の有無なども評価の対象とした」(古澤部長)。
アビームはこれまでの導入事例をもとに、食品業界の標準的な業務プロセスやドキュメント、約300本のアドオンプログラムを実装している「食品テンプレート」を用意しており、短期間での導入が可能だった。
基本的に、一般的な会計業務などはテンプレートに合わせるかたちとなったが、会計システムにおけるファクタリング支払いへの対応を追加開発で補完。人事に関しては、滞留年計算を自動化する仕組みを開発した。
新システムは、当初のスケジュール通り10年10月に本格稼働。6か月という短期間で導入を果たした。新しいシステムは、データの信頼性や正確性の向上に一役買っている。システム間の連携をできるようになったことで、人手を介した煩雑な作業を減らすこともできた。(信澤健太)

看板商品の一つである「晩餐館焼き肉のたれ」の箱詰め作業
3つのpoint
・テンプレートを活用して短期間で導入
・業務部門のプロジェクトへの積極参加
・アビームのプロジェクト管理と柔軟対応