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<ASEAN>KEL タイで「安心」を売る 日系企業に「辞めにくい」人材を紹介

2014/11/27 18:54

週刊BCN 2014年11月24日vol.1556掲載

 タイで日系企業にITインフラを提供する兼松エレクトロニクス(KEL、菊川泰宏社長)は、ASEAN事業の新たな柱として、人材育成サービスに力を入れている。タイの名門大学を卒業した有望人材を抜てきして、日本でスキルを身につけさせ、「離職のリスクが少ない人材」として現地の日系企業に紹介する。ASEANでは、欧米式の転職文化が根づいており、優秀な人材をいかに確保するかが日系企業の悩み。そうしたなか、KELは人材紹介によって、日系企業に「安心」を提供し、インフラ案件の獲得に結びつけようとしている。(ゼンフ ミシャ)

萩野棋平太
室長
 KELは今年4月、バンコクに現地法人を設立し、タイを製造拠点とする日系の自動車メーカーを中心に、ITインフラの構築を手がけている。

 同社は「日本品質」を切り札にして、システムの構築や運用だけではなく、客先で専門業務に携わる人材の確保を含めた周辺サービスの提供にも力を注いでいる。この10月、タイの名門大学を卒業した後、日本国内でおよそ1年間の研修を受けて設計ノウハウを身につけた2人の若手人材を日系の大手自動車メーカーに紹介した。現在も数人を育成中で、徐々に人材の紹介を広げる。客先に対しては「まだ若い人材なので、過度の期待はもたないように」(海外戦略室の萩野棋平太室長)と念を押しつつ、人材を日系企業で活躍させ、紹介料などをもらうことで収益につなげる。なお、タイなど海外で企業に人材を紹介する際、日本の職業安定法(職安法)は適用対象外になる。KELは、指揮命令系統を現地子会社が管理し、勤務先が先方企業の事務所内という形態を取り、人材紹介を行っている。

宮崎元成
グループ長
 タイでは、定期的に転職し、キャリアアップを図る人が多く、技術者をはじめ、専門スキルをもつ人材の確保が急務だ。そんな情勢下にあって、KELは研修を通じてノウハウを伝えるとともに、自社への絆を強くし、「日系企業に紹介した後に辞めにくい人材」(萩野室長)の育成を目指す。客先で専門の作業ができる人がいなければ、後方で動くシステムも売れない──。そう捉えて、人材紹介によって日系企業に「安心」を提供し、その延長線でIT案件の受注を狙うという戦略だ。

 KELは、政治問題で2011年から日中関係が悪化し、タイへの進出にシフト転換する日系メーカーが多いとみて、タイ市場に着眼。今年、現地法人の開設にこぎ着け、ビジネスの本格展開に乗り出している。人材紹介以外にも、アセスメント管理や運用代行などのサービスを提案して、「ライセンス管理に対する意識が低いとか、専門スタッフがいないといった問題を当社にとっての“商機”とみて、サービス事業の拡大につなげたい」(海外戦略室海外戦略グループの宮崎元成・グループ長)としている。
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外部リンク

兼松エレクトロニクス=http://www.kel.co.jp/