ASEANを「拠点」に事業拡大

 日系企業や地場の企業にIT製品・サービスを届けるという意味でASEANを「市場」として開拓する動きがある。そして、その延長で、この地域をビジネス活動や商材づくりの「拠点」として捉えようとする動きが広がりつつある。

 「今日のシンガポールの最高気温は29℃。クリスマスシーズンを迎える街は、あちこちでクリスマスツリーが飾られているが、暑くて、クリスマスっぽくない」。シンガポールに暮らしているブイキューブの間下直晃社長は、11月24日、Facebookに投稿した。氏が自らの活動拠点を赤道に近いシンガポールに移したのは、2013年1月。2年ほど前のことだ。間下社長は、シンガポール・チャンギ国際空港からASEAN各国に飛んで現地のキーパーソンと面談し、社長レベルでビデオ会議システムの商談を詰めている。

 「郷に入れば郷に従え」──。ITベンチャー企業の若手経営者たちはASEANビジネスを拡大するために、現地に居を構えて足で稼ぐ必要があると捉えて、地場での活動に力を注いでいる。オープンソース系のウェブ制作を手がけるプライム・ストラテジーの藤本陽介・最高執行責任者は、箸やフォークを使わずに、フライにした鶏の頭を素手で食する写真をFacebookで公開している。場所は、インドネシアの首都、ジャカルタ。藤本氏は今年半ばにインドネシアに移住し、現地でパートナーを獲得しながら、インドネシア事業の立ち上げに取り組んでいる。

 経営者が自ら活動拠点をASEANに移したり、ソーシャルメディアを活用して情報を発信したりしている。ITベンチャー企業は「頭の柔軟さ」を武器にASEAN市場に入り込み、地場に根づいた活動を展開。泥臭さを前面に押し出すことで、東京本社の経営フロアからASEANを開拓しようとしている大手ベンダーとの違いをみせつけている。

 こうした動きを目の当たりにして、大手ベンダーも意識を変え始めたようだ。シンガポールに海外事業部を開設しているNECは、シンガポールを拠点にセキュリティ事業の強化に乗り出した。ASEANは「大手」だろうが「ベンチャー」だろうが、関係ない。地場に入り込む行動力こそが、ビジネスの成否を決める。(ゼンフ ミシャ)