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転換期迎える大連IT産業 「CISIS」で課題浮き彫りに 国内ビジネスへのシフトが不可欠
2015/07/02 19:03
週刊BCN 2015年06月29日vol.1585掲載
人がいない展示会場
盧林
副市長
主催者側の発表によると、来場者数は前年と同等規模の約3万人。しかし、実際の展示会場は閑散とした様子で、ブース担当者は「昨年よりも来場者が少ない」と口を揃えた。オフショアアウトソーシングの市場環境が悪化したことによって、同ビジネスを得意とする大連IT企業への業界関係者の関心が低くなったものとみられる。
帝国データバンクによると、2015年5月末時点で、中国に進出している日系ソフトウェア受託会社は398社と12年9月比で17.1%減った。日本貿易振興機構(JETRO)大連事務所によると、「中国の他地域よりも大連では撤退の相談が増えている」という。IT企業が集積する大連軟件園(DLSP)では、入居企業約300社のうち8割が対日事業を手がけている。そのDLSPでは、2015年に新たに入居した日系企業は中小企業2社にとどまっている。
このような状況下、展示会場では、従来、アウトソーシングを主要ビジネスとしてきた現地IT企業が、中国国内向けのITソリューション・サービスを積極的にアピールしていた。例えば、大連華信計算機技術(DHC)は、各種センサによって家庭の電子デバイスを自動制御・操縦できる自社開発のスマートホームソリューション「AmazingBOX」シリーズを展示し、来場者の関心を集めていた。日系では、NTT DATA通信軟件工程(大連)が、自社開発のOAシステムや品質管理システムを展示。ブース担当者によると、「従来はオフショア開発を主要ビジネスとしてきたが、もうそれだけでは生き残れない。2014年に国内営業チームを立ち上げて、現在は中国の日系企業向けにプロダクトを提案している」という。
2015年が勝負の年
顧維維
副総裁
すでに、アウトソーシング大手の文思海輝技術(Pactera)や軟通動力信息技術(集団)(iSoftStone)、博彦科技(BEYONDSOFT)などは、数年前に国内ビジネスに舵を切り、一定の成果を上げている。「CSIO」では、Pacteraの顧維維・副総裁が、ビジネスモデルの転換をテーマに講演。約2万5000人の従業員を抱える業界最大手のPacteraでは、以前は売上高の約5割を占めていた対日アウトソーシングが、現在は15%にまで低下している。一方、中国の金融機関向けITサービスが成長し、IDCの調査によると、中国金融機関向けのITベンダー競争力で同社は3位につけている。
顧・副総裁は、「2015年は転換の年だ。市場の流れをしっかりと捉えれば、IT企業は勢いに乗ることができる」と前置きしたうえで、SMAC(Social、Mobile、Analytics、Cloud)を中核とするビジネスモデルが今後の鍵になると説明。国内ビジネスのポイントについて、「大事なのは、オフラインでのコミュニケーションだ」として、M&Aなどを通じて市場に入り込んだ後は、顧客との密接なコミュニケーションや、IT事業者とのパートナーシップによって規模を拡大させていくことが効果的であることを示した。
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