名古屋大学の組込みシステム研究センター(高田広章センター長=名古屋大学教授)が中心となって、自動車の車載ECU(電子制御ユニット)向けソフトウェア・プラットフォーム(車載OS)を開発する専門会社APTJを設立した。10月1日付で高田広章センター長がAPTJ代表取締役会長兼CTOに、同センターの高嶋博之特任准教授が同社代表取締役社長に就任した。

 車載OSを巡っては、欧州発のオープンアーキテクチャを採用した「AUTOSAR(オートザー)」の存在感が急速に増しており、従来の独自OSでは競争力を発揮しにくい状況が指摘されている。名古屋大学の高田教授はAUTOSAR研究の国内若手第一人者であり、これまでの名古屋大学での研究成果や知見を生かしつつ、最新のAUTOSAR仕様をベースとした車載OSの開発を目指す。

AUTOSAR仕様の車載OSを開発するAPTJ代表取締役会長兼CTOに就任した
高田広章・名古屋大学教授

 AUTOSARを巡っては大手SIerのSCSKが、AUTOSAR仕様に準拠したベーシックソフトウェアの開発を表明している。SCSKでは、豆蔵やイーソルなど車載ECU向け組み込みソフト開発に強いベンダー計6社で連合を組んで、包括的な協業体制を構築。AUTOSAR準拠の車載OSの開発を推進中だ。

 高田教授は、リアルタイムOSの「ITRON」や「AUTOSAR」の研究団体「TOPPERSプロジェクト」の会長を務めるなど、リアルタイムOSの大口需要者である自動車部品メーカーや、サプライヤーの組み込みソフト開発ベンダー各社との共同研究を熱心に推し進めてきた。自動車業界と組み込みソフト業界の双方に広い人脈をもち、研究成果にもとづく厚い信頼も得ている。

 新会社のAPTJでは、AUTOSAR仕様の車載ECU向けソフトウェアプラットフォームの技術者を向こう半年で30~50人体制に増やし、実際の製品は2~3年以内に開発し、5年後には年商10億円を目指すとしている。

 AUTOSARは、欧州発のオープンアーキテクチャの仕様であり、ソフトウェア製品は通常のパッケージソフト方式で販売されている。開発ベンダーとしては、独ベクターが先行しており、他にも独エレクトロビット、印KPIT、米メンター・グラフィックスなどが有名だ。

 国内でのAUTOSAR準拠のOS製品の開発は、まだ緒に就いたばかりで、残念ながら世界水準からは大きく立ち遅れてしまっている。APTJではこうした現状も踏まえて、まずはAUTOSAR技術者の育成から取り組んでいくものとみられる。