BCNは、12月2日、ITベンダーとIT販社をつなぐイベント「BCN Conference 2015」を東京・青山ダイヤモンドホールで開催した。今年のテーマは、「IoT」「クラウド」「セキュリティ」。各分野の有識者や、業界を代表するITベンダーが、それぞれの立場・テーマでIT業界の現状と未来、製品やソリューションについて講演した。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの尾木蔵人・
コンサルティング・国際事業本部 国際本部 国際営業部副部長

 冒頭、『週刊BCN』編集長の畔上文昭が挨拶。続く基調講演では、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの尾木蔵人・コンサルティング・国際事業本部 国際本部 国際営業部の副部長が登壇した。「ドイツインダストリー4.0とアメリカインダストリアルインターネットの衝撃~IoT・新産業革命のグローバルな潮流と日本企業のビジネスチャンス」をテーマに講演し、「これから3~5年以内に、(日本の)IT業界に大きなビジネスの波が来るのではないか」と予想し、それが「インダストリー4.0であり、IoTである」との考えを述べた。そのうえで、「日本のIT企業がどうデジタル化に向き合い、製造業など、さまざまな分野で共同して産業をIoT化し、インダストリー4.0の世界のなかで競争力を保っていけるかがキーになる」と訴えた。

インテルの井田晶也・執行役員 セールス・チャネル事業本部本部長

 続いて、インテルの井田晶也・執行役員 セールス・チャネル事業本部本部長が、「インテルが提唱する新しい仕事術~最新のインテルR プロセッサ技術とWin10によるワークスタイル変革~」と題した特別講演を行った。ITの進化によって、「競争力の強化につながるアイデアや取り組みが大きなビジネスチャンスにつながり、それが結果として個々の企業のみならず、市場全体の活性化にもつながる」として、すぐれたアイデアを生み出すためのワークスタイルの変革が急務であると主張した。

 特別講演の後は、各テーマごとに講演を展開。IoTトラックでは、まず、SAPジャパンの村田聡一郎・インダストリークラウド事業統括本部 IoT/IR4ディレクターが登壇し、「事例から学ぶIoTで変わる産業構造と生き残るための正しいプラットフォーム選択」をテーマに講演した。「IoT=デジタル」のなか、デジタルの5大特徴として「無料」「無制限」「時差ゼロ」「分析・予測」「明細・組み合わせ」を挙げながら「コンピュータの能力が限りなく上がっていて、フィジカルの世界では異質なものが手に入ったことになる。後は武器として、どう使うかがポイントとなる」と述べたほか、「SAP HANAクラウドプラットフォーム」が独シーメンスの「Cloud for Industry」に採用されている例などをアピールした。

 続いて、「IoT時代の製造業向け企業情報システム像」と題し、矢野経済研究所の忌部佳史・ICT・金融ユニット・主任研究員が講演。同社では、IoT市場規模がグロバールで181億米ドル(約2兆1800億円)、2018年には285億米ドル(約3兆4200億円)になることを見込んでおり、ダッソー・システムズやシーメンスなどを主要ベンダーとして捉えている。「シミュレーションによる設計・開発支援が高度化している」状況や、「デジタルツインがサイバー・フィジカル・システムの一形態である」ことなどを説明した。

 NTTコミュニケーションズの境野哲・ 技術開発部IoTクラウド戦略ユニット経営企画部IoT推進室IoT・エバンジェリスト担当部長は、「IoT普及の課題と解決の方向性、ビジネスチャンス~セキュアなICTインフラとデータ解析技術の活用~」をテーマに講演した。リスクやコストを抑えるために設備の遠隔監視ニーズが高まっている一方、日本はIoTデータの利用が遅れていると説明し、「いますぐに取り組むことが重要となる」と訴えた。また、サイバーセキュリティにも気を配らなければならないことにも触れて「SIerと協業して提案していきたい」との意向を示した。

 日本アイ・ビー・エムの宇藤岬・クラウド事業統括クラウド・テクニカル・サービス ソリューション・アーキテクトは、「IBM Bluemix で始める!つながる!IoTビジネス」をテーマに講演。IoTから価値を得るには、分析とアクションが必要であると説明したほか、「IBM Bluemix」の「NodeーRED」のよさをデモを交えてアピール。「IoT×クラウドを盛り上げていきたい」との考えを示した。

 IoTトラックのラストは、事業構想大学院大学の渡邊信彦・客員教授が「スマートマシンが街を変える」と題した講演を行った。メーカーやSIerがIoTをビジネスとして手がけるうえで、「IoTをテーマに大変革に挑もうとしているが、本来ならばデータを共有可能となったモノ同士をつなげる必要がある」と指摘した。

 クラウドトラックの冒頭では、NTTコミュニケーションズの林雅之・クラウドサービス部クラウド・エバンジェリストが登壇。「クラウドノーマル時代の今とこれから」をテーマに講演した。クラウドサービスのコモディティ化による価格競争を背景に、クラウド事業者の淘汰が進み、「今後は、投資余力のある、スケールメリットをもつ事業者が残っていくのではないか」と指摘。クラウド事業者を選定する場合には、「事業の永続性の高いサービスを選択することが重要」と語った。

 続いて、クラウドサービス推進機構の松島桂樹・代表理事が「クラウドの売り方~SIer、販売代理店が商機を逃さないために~」と題した講演を行った。IT業界のビジネスモデルが、製品売り切り型からサービス指向のビジネスモデルに転換しており、「ものづくりからおもてなしづくりに変わる」と説明。ユーザーが継続して利用できるサービスを提供することの重要性を訴えた。

 Arcserve Japanの末吉聡子チャネルマーケティング部長は、「わずか3ステップで実現!クラウドを活用した簡単バックアップ運用術」と題する講演を行った。とくに中堅中小企業のIT管理者の、日々のバックアップ運用に対する課題を調査したところ、「『コストが掛かりすぎる』『バックアップ環境が複雑になりすぎてどうすればいいかわからない』という課題が多かった」といい、同社製品を利用することのメリットや効果などを説明した。

 アクロニス・ジャパンの佐藤匡史・セールスエンジニア部セールスエンジニアマネージャは、「マルチクラウド時代のバックアップ~アクロニスが提供する次世代バックアップソリューション~」と題し、市場動向や同社の提供する最新のソリューションを紹介した。SaaS型バックアップソリューション「Acronis Backup Cloud」の特徴として、商流に合わせた階層構造やレポートの自動作成など、「単なるバックアップツールではなく、バックアップをサービス化するための仕組みが全部入っている」と事業者に向けてアピール。ユーザー向け機能としても、「DR/BCPソリューション」を強くアピールした。

 クラウドトラックの最後では、ソフトバンク コマース&サービスの友秀貴・ICT事業本部ICT営業本部仮想化クラウド販売推進統括部統括部長が「クラウドで即時解決、インターネット端末分離でセキュリティ対策【必見!】特に公共事業者様向け提案」と題する講演を行った。昨今の標的型攻撃の増加を背景に、「公共団体・企業ともに、インターネット分離をしなければならないようなセキュリティ対策が、至急、必要になっている」といい、クラウドを活用したVDI、SBCソリューションを、デモも交えながら提案。なかでも「非常にスピーディにお客様のニーズにお応えできる」として、SBC方式の「Horizon Air」を勧めた。

 セキュリティトラックでは、はじめに、ウォッチガード・テクノロジー・ジャパンの堀江徹・マーケティング部マーケティングマネージャーが登壇。「いま求められる中堅・中小企業のためのセキュリティインテグレータ」と題する講演で、「中小企業では一度のサイバー攻撃被害が廃業につながりかねない」と指摘。多層防御を低コストで実現できるUTM(統合型脅威管理)製品の有効性を訴えた。

 情報処理推進機構(IPA)の益子るみ子・技術本部セキュリティセンター情報セキュリティ分析ラボラトリー調査役は、「組織における内部不正をいかに防止するか」と題し、転職先に前職の企業秘密を持ち込むといった内部不正の事例を紹介。防止策については、「システム管理者はアクセス制御、権限管理などに力を入れる傾向にあるが、操作ログが残ることのほうが不正の抑止力としては高い」などの説明を行った。

日本ストラタステクノロジーの本多章郎・ソフトウェア事業部システム担当部長は、「米国政府機関のセキュリティプログラムCDMによるセキュリティの実践」と題し、同社のFT(フォールト・トレラント)製品と、日本サイトラインシステムズのセキュリティコンプライアンス製品を組み合わせたソリューションを紹介。両製品を使うことで「止まらないセキュリティ監査システム」を実現し、サイバー攻撃に耐えるセキュリティ環境を常に維持することが可能になるとした。

 NTTコミュニケーションズの竹内文孝・経営企画部マネージドセキュリティサービス推進室担当部長セキュリティ・エバンジェリストは、「企業経営を守る セキュリティリスクマネジメントとは」と題する講演で、セキュリティ事故が起こるごとに体制をつくるのではなく、リスク管理やインシデント対応の枠組みを組織として用意することの重要性を強調。マネージドセキュリティサービスの活用により、「専門的な分析技術や知見を取り入れながら、セキュリティを確保するための運用コストを下げられる」とアドバイスした。

 セキュリティトラックの最後は、野村総合研究所未来創発センターの梅屋真一郎・制度戦略研究室室長が登壇。「マイナンバー制度 ~12桁の数字が日本を変える~」と題し、マイナンバー制度の導入で日本社会はどのように変わっていくかを展望した。「マイナンバー自体は単なる12ケタの数字だが、この仕組みは戦後最大の社会変革になる可能性がある」と述べ、将来、より広い分野で番号や番号カードの活用が進むことにより、行政の効率や暮らしにかかわる制度が大きく改善されていくとの見方を示した。