2015年に発表された中国国家戦略「互聯網+(インターネットプラス)」により、製造や金融、流通・小売業、交通運輸など、あらゆる産業が既存の形態からの脱却を試みた。三大インターネット企業BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)に加え、斬新なアイデアで消費者を巻き込んだ新たなビジネスモデルが続出している。野村総研研究所(NRI)の最新研究にもとづき、ICTによる中国流通・小売・サービス市場の変化を伝える。

 15年の中国の消費市場は前年同期比10.7%増、中国GDPに対する貢献率は66.4%と高く、中国経済の成長をけん引する。アリババや京東などのネット勢の高成長は、中国小売・流通・サービス市場に劇的な変化をもたらした。実店舗の閉店ブームは収まらない一方で、中国ネット通販市場(EC)は農村部向けECや越境ECなどの拡大により緩やかな成長を続けている(グラフ)。昨年は、「双十一(アリババのT-Mall・淘宝で開催した一日特別セール)」で一日の取引額912億元(約1兆7000億円)を記録した。しかし、その成功の裏には、高い返品率や物流コストの上昇、年末の売上減少など、出展企業の負担は大きく、EC市場の安定的な発展を阻害している。

 そういった状況のなか、アリババと大手家電流通の蘇寧雲商、京東と大手スーパーチェンの永輝超市など、ECとリアル店舗の事業提携が増加し、持続的な成長を図ろうという動きが活発化している。また、EC事業者は飲食や不動産、医療などとの異業種連携を加速し、ECを起点に中国特異な「オムニチャネル経済圏」を構築し始めている。

O2Oの「京東衆包」物流モデル

 インターネットを起点とした事業革新や再編に、ユニークなサービスが多く登場し、市場を活気づかせている。大手ECの京東は、消費者の自由な時間を活用したラストワンマイル配送サービスを15年に開始。空いた時間に小遣いを稼ぎながら、身体を鍛えられるとのコンセプトで開始した「京東衆包」への登録ユーザーは25万人、斬新なO2O物流モデルを構築した。 

 実店舗事業者の成熟を待たずにインターネット先進国となった中国流通市場で成功するには、「中国新興企業をベンチマークした既存の枠組みを越えた新しいビジネスモデルの構築や日系企業の商品・サービスのブランド力を生かしてこそ」とNRI上海法人北京分公司の郷裕・営業総監上級諮詢顧問は語る。(文/鄭麗花)