【上海発】中国では、2012年から段階的に進められてきた流通税に関する改革が今年5月1日に完了し、営業税が廃止されて、すべての取引に「増値税」という付加価値税が課されることになった。中国で活動する企業の多くは、より精密な増値税への対応が求められるが、ここでITの果たせる役割とはどんなものか。日系企業の会計・税務を支援しているマイツ上海法人の山本真美子・公認会計士/税理士に、増値税への適切な対応についてうかがった。(真鍋 武)

 増値税とは、取引の各段階で税負担を添加する付加価値税のこと。日本の消費税に相当するが、形式自由の請求書保存方式ではなく、専用紙を専用の機械で発行するインボイス形式をとっているため、管理は複雑だ。売上金額だけが課税基準とされていた営業税と違って、増値税では売上増値税から仕入増値税を控除して税額を計算することになる。

マイツ上海法人
山本真美子
公認会計士/税理士
 山本氏は、「とくに、売上増値税から控除できる仕入増値税を漏れなくきちんと引けているか、という差引計算が重要になる」と指摘する。仕入増値税は「発票」という専用紙をサプライヤからもらって控除するが、そのためには1)発票が有効であること、2)発票が専用発票であること、3)入手した発票の認証を行うこと、という条件が求められる。3)の認証は、税務システム上で発票を認識してもらうことを指すが、いつでもできるわけではなく、発票を受け取ってから180日以内という期間制限がある。山本氏は、「180日を過ぎるとただの紙切れになり、控除できなかった分だけ余分に増値税を払わなければならない」と強調する。

 日系企業では、実際に増値税への対応で問題が起きているという。例えば、発票の管理を財務担当者に任せきりにしていたある企業では、財務担当者が退職してしまい、発票が認証されないまま180日が経過して、仕入増値税を控除できず、結果として多くの増値税を納めなくてはならなくなってしまった。日本と比べて中国では、業務に関する情報を従業員個人が囲い込み、情報が共有されない傾向にあるため、十分な引継が行われない企業ではトラブルが多発しているのだ。

 そこで山本氏が提案するのがITの活用だ。先の例では、「仕入増値税の発票の入手次期と発注番号とが紐づけてシステムに入力され、180日間近になっても認証されていない場合は自動でアラートが出るようにすれば、控除漏れは極力防げる」という。中国の日系企業ではIT専任者がいないケースが多く、日本と比べてシステム化が遅れている傾向にあるが、こうしたシステム構築を相談できるITベンダーは数多く存在する。

 また、増値税発票の認証だけに限らず、納期や回収期限などの日付管理も、経営および会計上の重要な要素だ。監査や税務調査では、日付に関する資料を多く要求される。山本氏は、「まさにここでITの力が大きく発揮する。適切な日時や関連情報をシステム内に保持して、必要に応じたチェック機能が働けば、業務の効率化・適正化を実現できる」とITを活用した適切な管理体制の必要性を訴えている。