米国や英国、中国などの企業によるFinTechサービスがグローバル市場で、影響力を増す一方、韓国のFinTech産業は多くの規制が妨げになって、取り組みが遅れていた。しかし、2015年から大規模な金融規制緩和と改革が急速に動き始めている。

 韓国では、戦略分野の中小企業を育成する目的で、14年から地域主導の創造経済革新センターを韓国国内の18か所に設立している。センター設立の狙いは、自治体と地域の中核を担う大手企業がスタートアップ企業の育成を支援し、地域経済の活性化を図っていくことだ。ICT融合を成長エンジンに、起業活動の支援と雇用創出を狙う現政権はFinTechを有望分野として挙げており、15年3月には複数省庁が協力し、FinTech産業の活性化に向け、京幾道にある創造経済革新センター内にFinTech支援センターを創設し運営を開始した。

三澤かおり
主席研究員
 同センターの運営開始から一年で、FintTech企業の96%が相談サービスを活用し、相談件数は328件(16年3月まで、韓国金融委員会調べ)にのぼる。相談内容は個人資産管理やP2P・クラウドファンディング、金融プラットフォーム、モバイル決済の順に多いという。こうした韓国FinTech分野の最新動向をマルチメディア振興センター情報通信研究部の三澤かおり主席研究員は、「従来の金融規制に課題を感じた政府が主導してFinTechインキュベーションの設立や規制緩和を実施し、大手ICT企業や金融機関も一気に動き出した」と分析し、「迅速な実行力が功を奏し、16年の上半期までのFinTech企業数は、約100社増えるなど、企業育成に成果が出始めた」と説明する。

 15年5月に発表した「FinTech産業活性化政策」では、銀行業界への出資制限の緩和や小規模FinTech企業の最低資本金基準の引き下げ、金融機関によるFinTech企業への出資が可能になったほか、非対面式による身元確認方式が認められた。また、銀行法が改正され次第、予備認可を受けた最大手通信キャリアKTとネットサービス企業大手カカオの2社が韓国初のネット専用銀行として、16年中に誕生する模様だ。後発でのスタートだが、カカオバンクの預金利子を現金や音源、ゲームのポイントとして提供することやロボアドバイザーによる24時間相談対応など、革新的なサービスを展開する予定だ。

 また、銀行や生保、損保などの業界団体の6機関に分散していた信用情報を一か所に集約して管理する韓国信用情報院が、16年1月に設立された。これを契機に金融およびFinTech業界のビッグデータ活用はさらに進む見通しだ。「ロボアドバイザーやビッグデータの活用、海外展開の三つを戦略として推進する韓国のFinTech産業から目が離せない」と、三澤主席研究員は語る。(文/鄭麗花)