トレンドマイクロ(エバ・チェン社長CEO)は、標的型攻撃やランサムウェア(身代金要求型不正プログラム)などの影響で複雑化する企業向けセキュリティ対策を強化するため、販売パートナーに対する支援策を改革している。従来企業向け販売で主軸だったウイルス対策ソフトウェア「ウイルスバスター」の導入が一巡した一方、ネットワーク上の振る舞いを検知し、早期に脅威を発見するといったニーズが高まっているためだ。このため、パートナーには、より高度な技術とサーバーやネットワーク関連製品などを組み合わせた販売、クラウドの知識や分析能力が求められている。ここ数年で実施してきたパートナープログラムの見直しや支援体制の強化策を大場章弘・上席執行役員営業統括に聞いた。

パートナービジネス推進部に一本化

大場章弘
上席執行役員
営業統括
 同社は、2014年度(15年12月期)から企業向けのパートナービジネスを順次見直してきた。大場上席執行役員は、「標的型攻撃などの脅威が増していることを受け、この2年半で、オンプレミスだけでなく仮想化、クラウド環境の対策を意識した布陣をつくってきた。社内のパートナー向け組織を『パートナービジネス推進部』に一本化しただけでなく、支援策や認定制度を見直してきた」と、セキュリティの脅威が複雑化するなかで進化した同社製品を販売するノウハウをパートナーに提供し、顧客にソリューション販売できる支援体制を整えてきた。

 同社によれば、企業向け販売の主軸は、標的型攻撃やゼロデイ攻撃をネットワーク上の振る舞いから検知し被害の深刻化を防ぐ製品「Deep Discovery Inspector」や、サーバーが抱えるセキュリティ課題を仮想・クラウド・物理環境にまたがりトータルに解決するセキュリティ製品「Trend Micro Deep Security」などの製品に移行しているという。「単にライセンスを販売するだけでなく、事前の検知やシステム間にまたがる対策、ログを収集し分析したデータにもとづく運用など、顧客の要求が多様化している」(大場上席執行役員)と、パートナーの知識と技術力を上げることと、各販売会社に対する個別の支援策を講じる必要性が高まっていることに加え、クラウドインテグレータなど新たなパートナーを発掘する必要が出てきたと、体制の見直しを図ったきた理由を説明する。

認定トレーニングを強化

 今年7月には、同社のパートナー向け支援プログラム「認定ソリューションパートナープログラム」の支援内容と加入要件を見直した。売上目標や認定要件別に、「プラチナ/5億円(Platinum)」「ゴールド/1億円(Gold)」「シルバー/2000万円(Silver)」の三つのランクで優先的な限定情報の提供やマーケティング・販売促進・技術支援などの特典を提供。全ランクで約150社が加盟している。とくに注力しているのが同プログラムに加入の販売会社に対するトレーニングだ。これまでに、Deep Discovery InspectorとTrend Micro Deep Securityの認定トレーニングの修了者は、約3700人、社数で約400社(16年7月現在)に達する。

 一方で、顧客が安全にクラウド環境を利用できるように、代表的なクラウドインテグレータと「TREND MICRO Cloud Integratorコンソーシアム」を立ち上げ、クラウド導入時にトレンドマイクロとパートナーが共同で対策を講じる。現在同コンソーシアムには、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)やMicrosoft Azureなどのクラウド基盤を使ったインテグレーションを得意とするアイレットやクラスメソッド、FIXER、サーバーワークスなど17社が加盟。トレンドマイクロと連携し、各社独自でサービス型のセキュリティ対策や運用・監視サービスなどの新たなソリューションサービスを提供している。これに加え、標的型攻撃など巧妙な攻撃の対策は、グローバル企業ほど複雑化していることから、AWSやマイクロソフト、IBM、VMwareなどグローバル企業と個々に「グローバルパートナーアライアンス」を結び、海外拠点を展開するグローバル企業に対し、世界の拠点を一貫して管理するセキュリティ対策の提供も本格化している。この点でも「日本の有力な販売会社とのアライアンスを強化中だ」(大場上席執行役員)と、製造業や小売業など業種別のアプローチを含め、個々の条件に合った対策をパートナーと共同で展開している。

 先述した通り、同社のパートナー対策は、ウイルスバスターなど製品別に分散していたパートナー部隊を「パートナービジネス推進部」に一本化した。よりトータルな支援が必要だからだ。同推進部では、各パートナー別に担当者を配置しているほか、営業担当者が同社製品の市場となり得る領域を発掘してパートナーにフィードバックしたり、ハイタッチで顧客を探しパートナーに支援を求める活動も展開している。大場上席執行役員は、「日本独自の課題を発見し、パートナーと共同でセキュリティソリューションを構築する」と、顧客に応じた緻密なパートナー支援ができるよう、今後も体制整備を柔軟に見直す方針だ。(谷畑良胤)