情報セキュリティソフトウェア会社のデジタルアーツ(道具登志夫社長)は10月3日、広島市に中国・四国地方を担当する東京本社を除く全国6か所目の営業所「中四国営業所」を開設した。「上場企業の社数が九州地区ほどあるなど、地場に密着すれば市場開拓の余地が大きい」(道具社長)と本格進出を決断。地場の販売パートナーとより密接に連携し、企業向けを中心に公共、文教関連などの案件を開拓する。同地方だけで2018年3月期までに、14年3月期に比べ3倍以上の売上高を目指す。

地元の大・中堅企業を開拓

道具登志夫
社長
 広島市に開設した中四国営業所は、路面電車の広島電鉄宇品線の「中電前停留所」前に位置する。従来中国・四国地方は、関西・中四国営業所(大阪市)の担当者が出張で営業していたが「最近、当社製品の伸び率が高く、情報セキュリティに対する意識も高いため、魅力的なマーケットになっている」(道具社長)ことから、同地方の中心地に営業所を開設し、販売パートナーと連携し営業とサポートを開始した。営業所開設に伴い、関西・中四国営業所は「関西営業所」に名称変更した。

 中四国営業所の責任者には、関西営業所の山根康志・営業部中四国営業所所長代理が着任するほか、山根氏を含め営業担当者3人を専従で配置。システム関連の要望に対しては、関西営業所のシステムエンジニア(SE)が引き続き担当する。

山根康志氏
 同社の主力製品は、ウェブセキュリティソフト「i-FILTER」とメール誤送信対策のメールセキュリティソフト「m-FILTER」の売上比率が高いほか、最近だと暗号化・追跡ソリューション「FinalCode」の案件が増加傾向にあるという。

 同地方の販売実績では、県・市町村自治体の公共と公立学校を中心とした文教関連で「i-FILTER」、文教関連で「m-FILTER」の引き合いが多い。一方で、全国的にみて、同地方は企業向け販売の比率が低い。このため「同地方の上場企業をはじめ、まずは地域の大・中堅企業を手始めに企業向け販売を伸ばす」(道具社長)と話す。

FinalCodeを企業と自治体に拡販

 中国・四国地方には、上場企業が133社ある。「最近、当社で売上高を伸ばしている」(道具社長)という九州の127社に比べて社数が多いほか、すでに大手ディストリビュータや二次店の地場の販売パートナーとの関係性が深いことから、市場開拓余地が高いと、営業所開設を決定した。

 16年3月期の実績で、同地方で3製品の業種別販売比率は、企業で3分の1、公共、文教で3分の2を占める。売上高は、14年3月期に比べ、17年3月期で2.4倍になり、新規売上高で4.3倍になる見通し。18年3月期には、売上高が3.2倍、新規売上高で7.3倍にするという緻密な計画を立てている。売上高を上げながら、同地区内の企業比率を現在の3分の1から5割までに拡大する。

 一方で、マイナンバーの施行や「自治体におけるセキュリティ強靱化を図るための指針」を受け、これらで要求されるセキュリティ水準を満たすソリューションとして「FinalCode」に注目が集まっているという。同製品は、大量データ蓄積装置にデータを入れる際、自動的にファイナルコード化(ファイナル暗号化)が可能だ。自治体で扱うマイナンバーや企業内の重要データなどが、仮に悪意をもって持ち出されたとしても、無価値な状態なため悪用することができない。

 最近同社では、沖縄県の豊見城市が「個人番号利用事務系」のネットワークの情報漏えい対策としてFinalCodeを導入したことを公表している。ネットワークを分離しても払拭できない個人情報漏えい対策をFinalCodeで実現した。道具社長は「昨今起きている大規模な情報漏えい事件により、情報セキュリティを強固にする意識が、大都市だけでなく地方でも高まっている」と、地域での対策が急務であることを訴える。自治体だけでなく企業でも、中国・四国地方ではとくにその意識が高まっているとみており、FinalCodeの販売増にも期待を寄せている。

安価な暗号化製品を販売開始

 同社の製品販売はすべて販売パートナー経由だ。中国・四国地区では現在、同地方に本社を置く、NICS、オフィスピーシーネット、グランドプレーン、山崎教具店、丸二産業、オオニシ、エス・シー・ラボ、エヌ・ティ・ティ・データ中国、ネクストビジョンなど30社が、同社のDigitalArts Business Partner Program(DABP)に参加する販売パートナーとして活動している。

 道具社長は「当社の情報セキュリティ製品は、国産という安心感がある。外資系の製品と異なり、国内で開発しているため、顧客の要望に応じカスタマイズが容易だ。最近では、SaaS型のFinalCodeなどサービス型の製品を伸ばしており、販売パートナーには継続的な収益を提供できる」と、販売パートナーの拡大にも力を入れていく方針だ。

 同社では10月3日、中四国営業所の開設に合わせ、1ライセンス月額1000円(税別)と従来製品に比べ大幅に価格を抑えた「FinalCode Express Edition」の販売を開始した。同製品は「社内のファイルを守る」ことに機能を絞った製品であり、「同地区の企業向け開拓にも弾みをつけたい」(道具社長)としている。

 同社の今期(17年3月期)は、第1四半期の売上高が前年同期比で14.1%増の9億1600万円、営業利益が同21.7%増の9900万円。通期見通しは前年度比で15%増の46億円を予想している。中四国営業所の開設による「業績に与える影響は軽微」としているが、市場規模の大きい中国・四国地区での地盤を築くことで、次年度以降の業績アップが期待される。(谷畑良胤)