海航集団(HNA)傘下の天津天海投資は12月5日、米国の大手ITディストリビュータであるイングラム・マイクロ(IM)の買収手続きを完了した。同社の株式100%を総額約60億米ドルで取得し子会社化した。買収完了を受けて、IMはニューヨーク証券取引所の上場を廃止。ただし、引き続き経営はAlain Monie CEOが舵をとる。

 HNAグループは、観光・物流・金融サービスなどを手がける中国の複合企業。1993年の設立で、従業員は約20万人を有する。同社はM&Aに積極的で、近年ではスイスポート、Avolonなどを傘下に収めている。今回の買収によって、IMがグローバルに展開するサプライチェーンサービスを取り込み、グループ傘下の海航物流集団などの体制を強化させる。

 一方、IMにとっては、中国を含むアジア地域での事業を拡大させる狙いがある。同社はグローバルで約2万7000人の従業員、20万社の顧客を抱える大手ディストリビュータで、2015年度の業績は売上高が前年度比7.4%減の430億2585万米ドル、純利益が同19.3%減の2億1510万米ドルと減収減益。内訳をみると、屋台骨の北米と欧州がともに落ち込んでいる。一方、中国を含むAPAC地域の売上高は100億6610万米ドルと全体の約4分の1の規模に拡大している。

 中国メディアの第一財経日報では、「IMは米国企業として、1997年に中国市場に進出したが、(中国の)政策による制限は少なくない。中国の大手顧客は不足しており、売上規模は同業の神州数碼(デジタルチャイナ)と比べて開きがある。また、クラウドサービスについてはセキュリティ面の関係で、中国市場に進出できていない」と分析。中国市場で競合となる神州数碼は、今年3月の事業再編を受けて、ディストリビューション部門が深センA株上場の純粋な中国資本へと生まれ変わっている。今回の身売りを通じて、中国企業の傘下に収まることで、IMは同国市場の開拓をより進めやすくなる。(真鍋 武)