中国河北省に、新たな国家級新区「雄安新区」が設立される。中国共産党・政府が「千年の大計」と位置づける極めて重要度の高い国家プロジェクトだ。今後、同新区に大規模な政府投資が実施されることは確実。ICT関連の支出拡大も見込まれ、今後10年間で1000億元超の規模になる可能性がある。(上海支局 真鍋 武)

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習近平国家主席の「核心」としての実績づくりとなる

 中国共産党と国務院は4月1日、河北省に「雄安新区」を設立すると発表した。国営新華社通信は、「習近平同志を『核心』とする党中央が打ち出した重大な歴史的・戦略的な選択で、深セン経済特区と上海浦東新区に続く全国的意義をもつ新区であり、千年の大計、国家の大事だ」と強調している。共産党機関紙の人民日報など、中国の主要メディアは2日付の紙面で大々的に報道。中国にとって極めて影響力が大きく重要な国家プロジェクトということになる。

 雄安新区は、北京から南西へ100km、天津から西へ100kmに位置する河北省の雄県・容城県・安新県とその周辺地域に設立する。北京・天津・雄安新区を結ぶと正三角形を描くことから、北京に集中する都市機能や環境問題の緩和に向けた「京津冀一体化」構想の一環として発展させる狙いがある。開発の初期段階で面積は100平方キロメートル、中期段階では200平方キロメートル、将来は2000平方キロメートルに拡大する計画。現時点で明確な時期や内容は公表していないが、人民日報の報道によれば、北京の人口や「非首都機能」を移転する方針だという。交通車両、大学、金融機関、国有企業などを移転させていく可能性が高い。

 新区設立には、政治的な狙いもうかがえる。中国には現在18の新区があるが、新華社通信が挙げた深セン経済特区は鄧小平氏、上海浦東新区は江沢民氏が主導したもの。両氏はともに、最高指導者の時代に中国共産党内で別格の立場を表す「核心」の称号を得ている。習近平国家主席は昨年、「核心」の位置づけを確立した。秋の共産党大会で2期目を迎える同氏にとって、実績づくりとして雄安新区の意義は大きい。
 
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 重要度の高い国家プロジェクトなだけに、大規模な政府投資と、それに伴う経済成長が予測される。雄安新区の設立通知を受けて、調査会社IDC中国は5日、同新区の発展予測を発表した。深セン経済特区と上海浦東新区をモデルケースとした場合、今後10年間の雄安新区への投資総額は5兆元で、2027年の人口は16年比2倍弱の200万人、GDPは同約20倍の4000億元強になる見込みだという。さらに、中国が建国100周年を迎える49年には、人口が300~500万人となり、「保守的にみたとしても」GDPは1兆元を突破すると予測している。

 また、IDC中国は「雄安新区は、中国の将来におけるデジタル経済の実験区になる」と指摘。交通・エネルギー・機械・建築材料・不動産・金融・医療健康・教育・電子情報などの業界で商機は拡大し、今後10年間のICT総支出は1000億元を超えると予測している。中国工業和信息化部(工信部)によると、16年1~11月の河北省のソフトウェア・情報技術サービス産業売上高は177億8014万元で、全国の0.5%に満たない状況だが、これが急速に拡大することになる。河北省を本拠地とするIT企業は少ないため、外部企業の進出が増加する可能性が高い。

 すでに市場は動き出しており、新区が設立される近郊エリアでは不動産価格が急騰し、売買停止になるなどの事態も起きている。しかし、重要な国家プロジェクトでありIDC中国の予測値も大きいとはいえ、深セン経済特区や上海浦東新区が立ち上がった頃とは経済環境が異なる。また、中国のほかの新区では、実際には開発がうまく進んでいないケースも見受けられる。IT企業が商機を獲得するには、現地に足を運び市場調査を行うなど、関連動向を注視して正確に情報を把握し、迅速に行動に移していく姿勢が求められる。