会社設立30周年で挑む新規事業

 2017年7月31日に設立30周年を迎えたエス・アンド・アイ(藤田和夫社長)が、新たな事業として「IBM Watson」に注力する。同社は、日本IBMと住友電気工業により、ネットワーク専業インテグレータとして設立。その経緯からIBMのハードウェアを中心とするインフラ構築を事業の柱としてきた。ところが、近年ではIBMがクラウドに傾注し、脱ハードウェアに向かっていることから、エス・アンド・アイも事業の転換を模索していた。そうしたなかで、同社が新規事業として選んだのが、Watsonだった。

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村田良成・執行役員 アライアンス本部本部長 マーケティング本部本部長(写真左)、
佐々博音・ソリューションサービス本部コグニティブ&UCデベロップメント統括部長

 「会社設立から30年のなかでも大きなビジネスシフトになる。当社はCTIやPBXの構築などを手がけてきたことから、コールセンターにおいて多くの実績がある。そこではWatsonが有効活用でき、実際にニーズも高い」と、村田良成・執行役員 アライアンス本部本部長 マーケティング本部本部長は新規の事業でWatsonを選んだ背景を語る。サービスの展開を開始したのは今年に入ってからだが、1年半ほどを準備期間として体制を整えてきたという。

 エス・アンド・アイの株式は、3月末時点で90%近くを日本ユニシスが保有していたが、4月から43.5%の株式をソフトバンクが取得。Watson日本語版のディストリビュータであるソフトバンクの資本参加により、エス・アンド・アイは事業転換を鮮明に打ち出した。ソフトバンクは、Watsonビジネスの販売チャネルとSEリソースとして、エス・アンド・アイに期待している。

 「Watsonは、適切な学習データを提供しないと導入効果を得にくい。ところが、その対応ができるSIerは限られている。そこをしっかり埋めていきたい」と、佐々博音・ソリューションサービス本部コグニティブ&UCデベロップメント統括部長は説明する。AIのアルゴリズムを考慮した学習データの作成は、ユーザー企業と一緒に確認しながら進める作業となるため、SIerとしての強みが生きる分野だという。

 「Watsonで期待した成果を得られなかったという話は、学習データに問題があると考えている。Excelのフォーマットを渡して、ユーザー企業に丸投げするという話も聞くほど。それでは効果は期待できない」と、佐々統括部長は指摘する。

 Watson関連のサービスを発表して以降、同社にはすでに多くの問い合わせがきているという。「引き合いが多いのは、チャットボット。コストを抑えてAIを活用したいというニーズにチャットボットは向いている。当社では、チャットボットのパッケージサービスを提供しているので、後は学習データを用意するだけでいいという手軽さも受けている」と、村田執行役員は好調さアピールする。数十万円のコストで始めることができるという。
 エス・アンド・アイでは、Watson事業の初年度となる今年で6億円の売り上げを見込んでおり、来年度は倍増を目標としている。(畔上文昭)