健康支援でヘルスケア事業拡大

 医療機器管理システムなどの開発で実績のある大阪市のアルカディア・システムズ(小幡忠信社長)は、新規事業としてセンシング技術を使い高齢者や疾患患者などが運動促進を図るためのヘルスケア製品の開発を進めている。医師などの専門家の協力で、ゲーム感覚を取り入れて楽しみながら継続的に運動できる運動支援システムを用途別に複数開発し、病院や介護施設などへの導入を目指している。将来的には、ウェアラブルデバイスなどのデバイスから取得した脈拍、血圧、体温などのバイタルデータと運動データなどをクラウド上に蓄積して解析する事業の展開も視野に入れている。

ME機器管理の
実績を生かす

 アルカディア・システムズは、1988年創業のソフトウェア開発会社で、システム・ネットワーク構築に加え、アプリケーション構築や医療ソリューションなどで実績がある。医療向けでは、病院内のME(Medical Engineering)機器の安全管理体制と院内備品のトータル管理、病院経営の改善ツールなどのシステムを開発するほか、独自アプリケーションやクラウド・サービスなどを展開している。医療向けが伸びていることから、小幡社長は、「医療向けを主力事業に育てる」と、需要が低迷する受託ソフト開発に代わる事業に位置づけている。

 自社開発の製品として、医療機器管理システム「CEIA(セイア)」は、300~400床規模の約160病院に導入している。昨年には透析業務支援システム「Seraph(セラフ)」もリリースし、医療関連のソリューションを拡大している。
 
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経営企画本部取締役の
相阪 渉 氏

 新規に事業拡大を目指すヘルスケア関連を開始したのも、医療管理システムを提供する病院からの要望で始まった。

 この5年間では、経済産業省や情報処理推進機構(IPA)からの委託事業で、用途に応じたセンシング技術を使った運動支援システムを開発している。「センシング技術導入運動システム」として特許も取得。この特許発明者で事業を主導する相阪渉・経営企画本部取締役は、「当社の医療関連施設で得たノウハウとゲーム専門会社などの協力会社と共同で他社にないシステムをつくった」と、事業拡大に意欲的だ。

ビッグデータ活用が
次の成長分野

 センシング技術を使った運動支援システムの開発は、2013年に京都大学病院の循環器内科の医師から、「維持期の心疾患患者に対し、楽しく継続性のあるゲーム感覚の運動システムがつくれないか」との相談があり、システム構築に着手した。

 現在は「シンリハ」と呼ぶ心臓リハビリ・各種疾患リハビリ向け運動システムとして製品化している。シンリハは、既存テレビに制御システムPCをつなぎ、画面に映るインストラクターと同じ運動をするゲーム感覚のシステムだ。ジェスチャー・音声認識によって操作ができるマイクロソフトのデバイス、Kinect(キネクト)で自身の骨格が画面に反映され、インストラクターと同じ動きができればポイントが加算する仕組みだ。
 
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ゲーム感覚で適切な運動を教えてくれる運動支援システム

 患者は、心拍や運動量などを測定できるワイヤレスセンサを装着。運動量とバイタルデータはクラウドで共有し、医師も確認できる。相阪取締役は、「昨年3月に製品化し、販売を開始した。キネクトの生産中止が伝えられたため、いまは、違うPCメーカー製品を組み込んでいる」という。

 同社は、この製品を応用し複数製品を展開している。各種疾患患者から健康な人までが継続的に運動を楽しめる運動支援システム「ヘルサポ」のシリーズには、前述の「シンリハ」のほか、高齢者や疾患予備軍向けに健康維持を目的にした80種類の運動ゲームを搭載した「センシングTANO」、理学療法士監修のリハビリテーション・トレーニング・サポートツール「新感覚レクレーションTANO」、瞬時に個人の姿勢を計測できるシステム「ケアピッと」などがある。

 病院や介護施設、老人ホームだけでなく、リハビリ関連の施設や一般企業など、健康増進を図る幅広い領域での販売を目指す。相阪取締役は、「疾患患者や高齢者などの回復・リハビリをする領域だけでなく、疾病予備軍に向けたトレーニング機器としても売り込む」と、ヘルスケア事業だけで5年後には約5億円の売上高をねらう。

 これらシステムの販売は、現在11社のメディカル関連に実績のあるITベンダーなどの代理店を通じ全国へ提案活動を展開している。だが、小幡社長の視点は、もう少し先にある。「運動支援システムの運動量データやウェアラブルから得たバイタルデータなどをクラウド上に蓄積し、そのデータを解析して個人にフィードバックしたり、専門家に提供し病気の未然予防や、疾患後の適切な運動メニューを提供する。各種医療機関や健康産業事業者と連携を模索し、データを活用したビジネスを展開したい」という。

 運動支援システムの導入先が拡大することで得られるビッグデータを活用したビジネスが、その先に広がっている。(谷畑良胤)