福岡市のITコンサルティング会社、ナレッジネットワーク(森戸裕一社長)の100%子会社である佐賀県伊万里市のPORTO(ポルト)は、IoT(Internet of Things)やドローンといったIT技術、シェアリングエコノミーなどの最新ITトレンドを活用し、同市の活性化支援を本格化している。将来的には、同市で効果を上げた施策をパッケージ化し、ITベンダー経由で全国に展開することも検討している。ITを活用した地域創生の新たな仕組みの構築を目指す。

コミュニティバスで宅配

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ナレッジネットワークの
代表でもあるPORTOの
森戸裕一社長

 PORTOは2017年7月、「内閣官房シェアリングエコノミー伝道師」でもあるナレッジネットワークの森戸社長が自身の故郷である伊万里市内に設立した。同市は、16年度の地方創生の取り組みとして、ITを活用した仕事創りセンターとして開発されたPORTOのコワーキングスペース「PORTO3316IMARI」を拠点に、地域産業と最新テクノロジーの融合による新たなビジネスづくりに関わる事業を開始。IoTやドローン、人工知能(AI)などに関するビジネス創出に向けた実証実験などを進めている。

 会社設立の理由について森戸社長は、「最新テクノロジーを使って、地方から次世代の日本をプロデュースしたい」と話す。政府がITなどを使った地方創生を促しているが、依然として具体策に乏しい。同社は、中小企業向けITビジネスのノウハウから生まれたアイデアを伊万里市で実証を繰り返し、打開策をみつける。

 具体的には、遊休資源を活用する「シェアリングエコノミー」や、地方都市の魅力を発掘するための「デジタルアーカイブ・マーケティング」、IoTやドローンなどのテクノロジーを使った一次産業の高度化などを行う。

 同社がまず目をつけたのは、遊休資産であり、民間委託するも経営環境が厳しくなりがちなコミュニティバスだ。18年3月には、同市の町民団体「黒川町まちづくり運営協議会」と共同で町内巡回バス「くろかわ号」の運行支援に関する実証事業を開始した。「継続的な運営ができるようクラウドとIoTを活用した低コストの運行管理やビッグデータを使った運行ルート、ダイヤ改善を目指す」(森戸社長)という。
 
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 まずは、多くの住民に利用を促すためドローンで撮影した地域の空撮映像を車内限定で流すほか、コミュニティバスの起点の停留所にある黒川公民館に大型ディスプレイを設置し、バスの位置情報や住民向け情報を配信している。

 また、宅配便業者と手を組みコミュニティバスを使った荷物の受け渡しを実証中だ。同公民館に集荷場を設け、住民が自分の荷物を取りにくる仕組みである。このほか子どもの見守りサービスや、情報を拡散するためのスマートフォンなどへの情報発信も視野に入れている。「物流や見守りサービスで、シニア層の地域での役割を増やす」(森戸社長)と、人の交流を活性化する施策にする考え。物流に関しては、今年9月頃から半年ほど運用する計画だ。

クラウドファンディングも活用

 デジタルアーカイブ関連では、市役所に所蔵されている16mmフィルムの動画をデジタル化して、クラウドにあげ、誰でも閲覧できるようにする。「天皇陛下がこられた際の映像など、貴重なデータの劣化が激しく、早期にデジタル化する必要がある。これだけでなく、ドローンで撮影した空撮映像などを収め、国内外の観光客誘致に役立てるほか、SNSなどで拡散する」と、既存資産と最新デジタルとの融合で多彩なアイデアを具現化する見通しだ。

 伊万里焼をはじめとした地域産品の市外での販売を拡大するといった課題に対し、ふるさと納税やクラウドファンディングを使った構想もある。森戸社長は、「伊万里市から外に出て生活圏が変わった元住民を、物理的に呼び戻すのは至難の技だ。だが、何らかの形で、ふるさと活性化のためになることに参画してもらう仕掛けが必要だ」と話す。

 そのためには、ふるさと納税の仕組みを使い、SNSなどを利用して元住民などからの納税を増やしたり、予算不足で実現できない自治体や市内の企業が生み出したアイデアを自治体が行うガバメントクラウドファンディングで支援するなど、“地域商社”的な役割を果たす。

 同社は現在、伊万里市でドローンパイロットの育成講座を行っている。講座に応募してくるのは、公務員のほか、建設業や農業の従事者という。人材不足が深刻な一次産業を中心にドローンで作業を高度化したり、IoTやAIを含め、新たなビジネスモデルをつくる意識を広める。

 森戸社長は、「地域の課題解決に最新テクノロジーやビジネスモデルを使う。伊万里市で実証し成功した事業をパッケージ化し、全国に波及させる」と、地場に強いシステムインテグレータなどから、同社が構築したパッケージを販売することを検討している。今後1年間で50自治体に波及させることが当面の目標だ。(谷畑良胤)