週刊BCNは8月3日、札幌市内で「業界の“今”がわかる!有力商材が見つかる!SIer・リセラーのためのITトレンドセミナー」を開いた。各分野の有力ベンダーの最新商材、パートナープログラムの紹介や識者による市場トレンドの解説に、参加者は熱心に耳を傾けた。

 基調講演には、IT産業ジャーナリストで、一般社団法ITビジネス研究会の代表理事を務める田中克己氏が登壇。「変わるIT産業、変わらぬIT企業」をテーマに、日本のエンタープライズIT市場の課題に言及した。田中氏は、「IT産業のパラダイムシフトが起こり、SIのなかでも付加価値の低いものや単純なハードやソフトの販売では、ITベンダーのビジネスモデルとして先がない状況になってきている。大塚商会ですら、2018年12月期上期決算では、複写機のビジネスで利益が伸びないという状況が課題として浮き彫りになっており、新しいビジネスへの転換が必要」と現状を分析した。また、国産大手総合ITベンダーに対しては「目先のSIビジネスをやるので精一杯でなかなか変われない」として、彼らがデジタルトランスフォーメーション(DX)をリードする存在にはなり得ないと指摘。国内外のDX事例を紹介しながら、「新興企業、斬新なアイデアを実現する中小IT企業、さらにはユーザー企業などに、これからのデジタルイノベーションをリードするチャンスがある」と結論づけ、参加者に奮起を促した。
 
IT産業ジャーナリスト、一般社団法ITビジネス研究会代表理事の田中克己氏

 各セッションでは、市場で注目を集める製品・サービスのベンダーが自社製品のメリットやパートナー戦略を説明した。

 セッション1では、「バックオフィスの働き方改革を実現する郵便発送業務効率化ソリューション」と題して、ピツニーボウズ SMBソリューションディレクターの堀内朗氏が講演した。堀内氏は、「多くの企業で本来業務における生産性向上についてはさまざまな取り組みを進めているが、間接部門や営業事務などの現場では本来業務以外の多種多様な文書の発送業務に2割くらいの時間を費やしていて、働き方改革が進んでいない。発送関連の業務は手作業も多く、これを機械化、自動化することで得られるメリットが大きい」と指摘。発送種類の「紙折り」「封入」「封かん」を自動処理することができるソリューションとして、同社の「インサーター(封入封かん機)」を紹介した。発送先ごとに枚数が異なるケースや複数のシステムから発送書類が出力される場合も対応が可能で、「誤封入・誤発送の防止や封入封かん作業の納期短縮、労務コストの大幅な削減などが実現できる」という。さらに、「企業情報システムとの連携提案もしやすい商材」だとアピールした。
 
ピツニーボウズ SMBソリューションディレクターの堀内朗氏

 セッション2では、キヤノンITソリューションズ ITインフラセキュリティ事業部ITインフラセキュリティ技術本部セキュリティリサーチャーの酒井健太氏が登壇し、「最新のセキュリティ脅威動向と、多層防御を実現するフレームワーク」をテーマに講演した。酒井氏はまず、サイバーセキュリティの最新動向を解説し、「サイバーセキュリティ対策がIR上も大きな意味をもつようになったほか、攻撃者の目的が自己顕示欲や技術力の誇示から金銭を得ることに変わってきており、機密情報、サーバーやPCの捜査権限など、現金化できるものを攻撃のターゲットにする傾向が強まっている」と指摘。そのうえで、高度化が進む一方のサイバー攻撃に対しては「未然に防ぐ対策だけでなく、侵入された場合も想定し、入口対策と内部対策、出口対策の複数のセキュリティ対策を組み合わせた多層防御の考え方が重要」だと説いた。さらに、現実的にはユーザーがセキュリティ対策にかけられるコストは有限であることから、費用対効果の高い投資を行うために、「対策すべきリスクの特定」「適切な防御」「不正な通信の検知」「検知されたサイバーセキュリティイベントへの対応」「阻害された機能・サービスの復旧」という五つのフレームワークに沿って検討することが有効との考えを示した。同社はセキュリティ対策製品のディストリビュータ、SIerとしての知見・技術力も蓄えており、五つのフレームワークを幅広くカバーするセキュリティ製品をラインアップしていることもアピールした。
 
キヤノンITソリューションズ ITインフラセキュリティ事業部
ITインフラセキュリティ技術本部セキュリティリサーチャーの酒井健太氏

 セッション3では、キングソフト WPS事業部ビジネスパートナー Div.ディレクター代行の高橋満氏が「コスト削減のカギは、オフィスソフト選定にあり! ~定番からの脱却で見える化する『課題』と『解決策』~」と題して講演した。「Microsoft office」の互換ソフト「KINGSOFT Office」を開発・販売してきた同社は、2016年にKINGSOFT Officeを「WPS Office」にリブランドした。高橋氏は、WPS Officeが操作性、UI、保存形式などあらゆる面でMicrosoft officeと非常に高い互換性をもち、マルチデバイス対応など働き方改革への要請にも応えて使い勝手を継続的に改善していることなどを紹介。さらに、「VBA対応ではマイクロソフトからAPIの提供を受けている唯一のベンダーだ」として、マイクロソフトとの関係も良好であることを強調した。国内での実績については、「一般企業や自治体はもちろん、文教市場でも多くの実績がある」という。高橋氏は、「Windows 7とoffice 2010のサポート終了、そして当社が強みをもつ文教市場で教育指導要領の改正が行われる20年に向けて、販売店にもさらに大きなビジネスチャンスが見込まれる」と、WPS Officeを扱うメリットを来場者に訴えた。
 
キングソフト WPS事業部ビジネスパートナー Div.ディレクター代行の高橋満氏

 セッション4では、「クラウドビジネスへの招待~SystemEverで始めるストックビジネス」と題して、Everジャパン社長の前田朝雄氏が講演した。Everジャパンは昨年6月、韓国の有力ERPベンダーである永林院ソフトラボの日本法人として設立され、中堅・中小企業向けのクラウドERP「SystemEver」の日本市場への本格展開に着手している。SystemEverはクラウドインフラとして「Microsoft Azure」や「Alibaba Cloud」を採用しており、「とくに中国を含むアジア地域でビジネス展開している企業にフィットする」としている。前田氏は、「クラウドERPであるSystemEverをリリースしたことをきっかけに、アジア地域からグローバル市場にビジネスを拡大していく方針を打ち出した。日本をその基盤となる市場と位置づけている」とコメント。日本国内で本格的な販路拡大とパートナーエコシステム構築に取り組んでいることを説明した。また、「SystemEverはこれまでの多くのERP製品のようなフロー型のビジネスモデルではなく、ストック型ビジネスモデルであり、担いでいただくパートナーにとっても、ストック型のクラウドビジネスにシフトするきっかけになり得る。Everジャパンは利用契約料の分配部分しか受け取らず、パートナーが付加価値サービスで儲けられる余地は非常に大きい」として、パートナーに提供できるメリットの大きさにも自信をみせた。カスタマイズツールや営業担当者の教育カリキュラムも充実させ、パートナー支援の仕組み・体制づくりに尽力しているという。
 
Everジャパン社長の前田朝雄氏

 セッション5では、「バックアップデータを大幅削減できるバックアップアプライアンスとは?!」をテーマに、arcserve Japan 営業統括部マネージャーの小久保洋平氏が講演した。同社のバックアップソフトをハードウェアにプリインストールしたアプライアンス製品「Arcserve UDP 8000」シリーズの特徴を中心に解説した。小久保氏はArcserve UDP 8000について、「複雑なデータ保護環境でもワンストップのトータルソリューションをシンプルに実現できるほか、アプライアンス製品なのでインストール不要でセットアップも簡単。最適にサイジング済みで、システム設計の工数とリスクも最小限に抑える。さらに、バックアップ対象の数や容量にかかわらず、ソフトのライセンスは使い放題。後からサーバー台数が増えても安心でライセンス管理の煩わしさがない」とストロングポイントを列挙し、多くのメリットを備えていることを説明。また、ハードウェアは日本製で、これも「国内のお客様に多くの支持をいただいている要因になっている」とした。さらに、メーカーとしてのサポート、メンテナンスも充実させていることも強調し、パートナーにとっても売りやすい製品であることをアピールした。なお、UDP 8000シリーズは、大手ディストリビュータのダイワボウ情報システムが販売、問い合わせ窓口を手がけている。
 
arcserve Japan 営業統括部マネージャーの小久保洋平氏

 主催者講演では、週刊BCN編集長の本多和幸が、エンタープライズITビジネスの技術トレンドやビジネストレンドなどについて取材情報をもとに解説した。