週刊BCNは4月20日、SIerとリセラー向けのセミナー「週刊BCN主催 全国キャラバン 2018 in 沖縄」を沖縄県市町村自治会館で開催。基調講演のほか、全国展開に注力するベンダーが商材とパートナー戦略を紹介した。

 冒頭の基調講演は、IT産業ジャーナリスト兼一般社団法人ITビジネス研究会代表理事の田中克己氏。「変わるIT産業、変わらぬIT企業」と題し、ITのトレンドと市場環境が大きく変わってきているなかで、SIerはどうあるべきかついて語った。
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IT産業ジャーナリスト兼一般社団法人ITビジネス研究会代表理事の田中克己氏

 田中氏は「日本のIT企業は、欧米ITベンダーの販売代理店に成り下がっている。世界のマーケットで影響力がなくなっている」と指摘し、新しいビジネスを早急に築くことの重要性を訴えた。なかでもAIやIoTは100年に1度の大変革をもたらすものの、「さまざまなベンチャー企業が台頭してきているが、大手IT企業はなかなか変われない。また、IoTでは、ユーザーがサービスベンダーとなるケースが増えてきた。IT業界とそうした企業との垣根が、曖昧になりつつある」と、IT業界のあり方にも変革の波が来ていると説明した。

 また、田中氏はSI業界について、「作業の対価を得るビジネスには、成長に限界がある。価値に対して収益を得るビジネスモデルへと変えていかなければいけない。変わらぬ企業は淘汰される」とし、市場の変化にすばやく対応することの重要性を説いた。
 
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キングソフトWPS事業部執行役員の齋藤理氏

 セッション1では、キングソフト WPS事業部執行役員の齋藤理氏が登壇。「コスト削減のカギは、オフィスソフト選定にあり! ~定番からの脱却で見える化する『課題』と『解決策』~」と題し、オフィスソフト「WPS Office」が支持される背景と導入メリットなどを紹介した。

 齋藤氏は冒頭、日本で高い知名度があった「KINGSOFT Office」が、日本法人の設立10周年(2016年11月)を機に「WPS Office」に変更したことを紹介。WPS Officeは、もともとグローバルのブランド名であり、日本のブランド名を統一したかたちになる。WPS Officeの特徴は、Microsoft Officeとの互換性が高く、デフォルトの拡張子も同じであることから、スムーズに導入できる点にある。VBAにも対応しているため、Microsoft Officeからの移行もしやすい。また、マルチデバイスに対応しており、Windows版のライセンスで、iOSやAndroidのデバイスで利用できる。齋藤氏は「Windows 7のサポート終了など、PCをリプレースするタイミングがビジネスチャンスとなる。また、WPS Officeは価格競争力が高いため、浮いた資金で、ユーザーは他のシステムを導入することができる」と説明。キングソフトは、直販をせず、すべてパートナー経由で販売している。「遠慮なく相談してほしい」と、齋藤氏は最後にアピールした。
 
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キヤノンITソリューションズITインフラセキュリティ事業部ゲートウェイセキュリティ企画本部
技術開発部セキュリティリサーチャーの西浦真一氏

 セッション2では、キヤノンITソリューションズ ITインフラセキュリティ事業部ゲートウェイセキュリティ企画本部技術開発部セキュリティリサーチャーの西浦真一氏が登壇。「最新のセキュリティ脅威動向と、多層防御を実現するフレームワーク」と題し、進化を続けるサイバー攻撃の現状と、最適なソリューションについて説明した。

 西浦氏は、「サイバーセキュリティの脅威は日々変化しており、多岐にわたる対策が必要とされている。また、上場企業の多くが、サイバーセキュリティ対策が株価を左右する重要な取り組みとの認識を示すようになっている。一方、攻撃側の意識も大きく変化していて、以前は多くが自己顕示のためのものだったが、最近は金銭目的に変わってきている。そのため、現金化しやすいものが狙われている」と、サイバー攻撃の現状を紹介。攻撃の多様化により、100%の防御が難しいため、未然に防ぐのではなく、侵入を想定した対策も必要になっているという。そうしたなかで西浦氏は、ピンポイントではなく、多重防御が有効であるとして、「特定」「防御」「検知」「対応」「復旧」という五つの視点で考えるセキュリティ対策をとりあげた。「当社はSIerの経験を生かし、最適なソリューションを提供している。セキュリティに関することは、なんでも遠慮なく問い合わせてほしい」と会場に呼びかけた。
 
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沖縄県商工労働部情報産業振興課主幹の兼村光氏

 次に基調講演2として、沖縄県商工労働部情報産業振興課主幹の兼村光氏が登壇。「沖縄ITイノベーション戦略センター設立について」と題し、地域活性化策としてのIT産業振興の取り組みを紹介した。

 沖縄県ではIT産業が観光産業に次ぐ産業であり、IT企業の誘致や雇用の創出など、さらなる発展に向けた取り組みを継続している。兼村氏は「沖縄のIT産業は伸びているが、個々の企業をみると下請けに甘んじているケースが多い。現在は、AIやIoT、ビッグデータなど、さまざまなパラダイムシフトが起きている。ビジネススタイルも変えていかなければいけない」と、沖縄のIT産業に対して、変革の必要性を訴えた。行政としても、これまでは雇用を重視していたが、IT産業の発展によって雇用が生まれるという発想で取り組んでいくとした。そうしたなかで、新たな施策の一つとして、「沖縄ITイノベーション戦略センター」の設立を紹介。今年の夏に本格的に事業を開始する。「センターでは、先進的なテクノロジーやノウハウを収集し、IT産業における成長戦略の提言、シーズとニーズのマッチングなどの事業プロデュース、スタートアップ企業を立ち上げる人材の育成などに取り組む。“箱”ではなく“組織”をつくる」という。そのためにも、沖縄のIT企業との共創が必要と訴えた。
 
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ピツニーボウズジャパンSMBソリューションズ営業本部統括本部長の堀内朗氏

 セッション3では、ピツニーボウズジャパンSMBソリューションズ営業本部統括本部長の堀内朗氏と、同社のパートナーであるオーシーシー データビジネス事業本部DCサービス部部長の新垣勝巳氏が登壇。「働き方改革を支援する最新業務プロセス最適化ソリューション」と題し、発送業務を中心とした業務プロセスの最適化に向けたソリューションを紹介した。

 まず、堀内氏は「請求書や通知書、DMといった商取引関連の書類の発送には、一般的に無駄な作業が多く、残業につながっている。しかも、78%が手作業に頼っているというデータがある。機械を使えばエラーを防ぐことができ、働き方改革につながる」と、発送関連の業務には最適化の効果があると説明。同社のインサーター(封入封かん機)を紹介した。
 
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オーシーシー データビジネス事業本部DCサービス部部長の新垣勝巳氏

 新垣氏は「県内企業の54%が、業務プロセスの見直しに高い関心を示している。ただ、印刷関連の業務に関しては、取り組みが遅れていて、残業を生む要因の一つになっている。最近では、人材の確保が困難になってきていることもあり、帳票発送業務のアウトソーシングを提案しやすい」と、県内の市場動向を説明。そこで、帳票の保管、印刷、加工、仕分け、集配送などを担う「データプリントサービス」を紹介。県内の自治体をはじめとする事例や、その他の実績について説明した。最後に新垣氏は「ハードの調達からハウジングまで、トータルでサポートしている。沖縄の働き方改革に貢献したい」とアピールした。
 
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arcserve Japan営業統括部マネージャーの小久保洋平氏

 セッション4では、arcserve Japan営業統括部マネージャーの小久保洋平氏が登壇。「仮想化、HCI環境でも84%バックアップデータを削減できるバックアップアプライアンスとは?!」と題し、中規模環境のバックアップ・リカバリ運用に最適化された同社のアプライアンス製品「Arcserve UDP Appliance」を紹介した。

 クラウドサービスのような使い勝手を実現するとして、市場が急拡大しているハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)だが、そのバックアップ環境においては、データ量や運用環境のサイジングなどを考慮する必要があり、顧客への提案で悩むSIerやリセラーは多い。UDP Applianceは、物理環境と仮想環境を問わず、一つの画面でバックアップを統合管理できる。そのため、HCI上に仮想環境が乱立しても、バックアップ作業が煩雑になることはない。「UDP Applianceは、ライセンスが使い放題。サーバーを追加しても、ライセンスの追加が発生しない。当社は外資系企業だが、UDP Applianceはメイドインジャパンモデル。神奈川の工場で生産しており、全国7拠点に部材を置いていて、サポート体制も整っている」と小久保氏。12TBと24TBのモデルを用意しており、追加購入した分も統合管理ができるという。また、UDP Applianceの強みとして、重複排除による圧縮率の高さをアピール。データ容量を94%削減した事例などを紹介した。ちなみに、UDP Applianceはダイワボウ情報システム経由で提供している。
 
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沖縄県内のSIerやリセラーが数多く参加。セミナーは大いに盛り上がった

 最後に主催者講演として、週刊BCN編集委員の畔上文昭が「2018年のIT動向とポスト2020 ~量子コンピュータ時代がすぐそこに!?~」と題し、量子コンピュータやアニーリングマシン、ボルツマン機械学習などから、今後のITビジネスのあり方を紹介した。

 セミナーでは、休憩時間とセッション終了後に名刺交換会を実施。講演者と参加者、また参加者同士の情報交換で盛り上がった。なお、週刊BCNは今後も「ITトレンドセミナー」シリーズを全国主要都市で開催していく予定である。