阿里巴巴集団(アリババグループ)のクラウド事業が、急成長を続けている。関連の売上高は四半期ごとに倍増ペースで推移し、協業の枠組みも着実に広がっている。世界市場で先行する米国勢との差をさらに縮めるため、今後は製造業をターゲットにする方針だ。

 アリババは、2009年にクラウド部門の会社を設立し、中国国内を中心にシェアを伸ばしてきた。IDC中国の調べでは、17年の中国国内のクラウド市場で45.5%のシェアを獲得し、他社に大きな差をつけてトップを維持。18年4~6月期決算では、クラウド事業の売上高は前年同期比193%の46億9800万元(約772億円)と高い伸びを続けている。
 
「2018杭州・雲栖大会」の会場

 アリババクラウドは現在、中国市場では圧倒的だが、世界市場では米国勢の後を追う立場だ。米ガートナーによると、17年のIaaSの世界市場で、アリババは3.7%のシェアで3位に入った。一方、首位のアマゾン ウェブ サービスは53.7%のシェアを握り、売上高はアリババの10倍以上の約122億米ドル。2位のマイクロソフトは、シェア8.7%で売上高は約31億米ドルだった。

 9月19日~22日に本拠地の浙江省杭州市で開催したクラウド部門のイベント「2018杭州・雲栖大会」では、SAPとの提携を強化し、SAP S/4HANA Cloudを提供するために、開発や市場投入を共同で行う方針を発表した。またVMwareとも提携し、ハイブリッドクラウドソリューションを提供していく方針を示した。

 SAPとの提携強化やVMwareとの提携は、米国勢とほぼ同じ路線とみていいだろう。アリババ独自の動きとしては、新たに半導体の子会社を設立し、19年下半期にAIチップを発表するとの見通しを示したことだ。さらに、大会後の9月25日に、日本の半導体大手ルネサス エレクトロニクスが、IoT分野で協力することを目的に、アリババと提携すると発表したこともある
 
新製造について説明する馬会長

 背景にあるのは、中国経済の変化だ。アリババは「中国経済の全体的な変化に伴い、中国の発展は製造業の変革とアップグレードがカギを握っている」(広報)と分析し、製造業をクラウドの新たな原動力にする方針を示している。

 アリババの馬雲会長は2年前の大会で、ニューリテールと新製造、新財務、新技術、新資源の五つの戦略を提案していた。今回の大会では新製造を挙げて「ニューリテールの後は新製造だ」と強調し、クラウドや人工知能、IoT、ビッグデータが製造業に変革をもたらすとの考えを説明した。

 アリババはこれまで、ニューリテールの推進に注力してきた。その結果、「アリババクラウドは、リテール業界のモデルチェンジで重要な役割を果たし、新しい小売りのインフラになった」(アリババ広報)。次は製造業向けにも力を入れ、さらなる成長を目指す考えだ。