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ファーウェイがHAS2019で見せた自信、5G時代の到来に大きな期待感

2019/04/24 13:08

週刊BCN 2019年04月29日vol.1774掲載

【深セン発】華為技術(ファーウェイ)は4月16日~18日、同社の本拠地・中国広東省深セン市で経営戦略説明会「第16回グローバルアナリストサミット(HAS2019)」を開催した。米国との緊張が続くなか、同社は5G時代の到来に大きな期待感を示し、さらなる成長に向けて自信をみせた。(上海支局 齋藤秀平)

批判はなく、余裕の姿勢

 HAS2019では、米国からの圧力を受けるファーウェイがどのような方針を打ち出すかに注目が集まった。それを示すように各国のアナリストやメディアが参加した。ファーウェイによると、来場者数は約680人以上。予定していた定員を上回り、初日の基調講演の会場では、ファーウェイ社員の入場が規制されるほどだった。
HAS2019の会場

 基調講演で最初に登壇した胡厚崑(ケン・フー)取締役副会長兼輪番会長は「これまでの数カ月の間に、ファーウェイは何度もトップニュースになったことに感謝したい。よくこんなにファーウェイを取り上げてくれた」と述べた。5G市場からファーウェイを排除しようと圧力をかける米国への批判は封印。逆にファーウェイへの注目度が上がったことをプラスの意味として強調し、余裕の姿勢を示した。
ケン・フー輪番会長

 ファーウェイはこれまで、圧力を強める米国に対して一貫して正当性を訴え続けてきた。しかし、米国は依然としてファーウェイに対する強気の姿勢を軟化させていない。成長を続けるファーウェイにとって、現在の状況が長期化することは避けたいところ。HAS2019では、そうしたファーウェイの思惑を垣間見ることができた。

 ケン輪番会長は、会場から出たサイバーセキュリティーに関する質問への回答で「政治的になると、感情論になり、技術の成長ができなくなってしまう。成長速度が落ちれば、コストが上がり、それを社会が負担しなくてはいけなくなる。これはあってはいけないことだ」と述べた。名指しはしなかったものの、米国に対して暗に冷静な対応を求めた。

「革命」で二桁成長へ

 ケン輪番会長は、5Gの時代が「想像より早くやってきている」とみている。4Gの頃と比較し、チップセットや端末の開発スピードが速いことを挙げ、「3Gの時代に5億人のユーザーを獲得するのに10年かかり、4Gの時代は5年かかったが、5Gはわずか3年で達成し、2025年までに5Gのユーザー数は28億人に達するだろう」との見通しを示した。

 さらに「低遅延ハイスピードでボトルネックがなくなる。全てのものをネットワークにつなげ、クラウドにのせることができるようになり、より多くのチャンスが期待できる」と説明。5GでVRやARのユーザー数が加速的伸びるとの見通しを示したほか、5Gと折り畳み端末でゲームやオンライン学習が大きく変わる可能性があることにも言及し、「5Gはひとつの革命。世界が変わろうとしている」と呼びかけた。

 そのうえで、「3年前までは、通信キャリアの方は、5Gがどのような商業的価値を生み出すか理解できていなかったが、18年下半期から5Gに対する見方がより現実的になってきた」と紹介し、「業界にとって、5Gは新たな投資のモチベーションになる。ファーウェイの通信キャリア向けの事業を成長させてくれると思っており、19年は二桁の成長を期待している」と話した。

クラウドのカギはAIが握る

 基調講演は、人工知能(AI)やクラウドについても話が及んだ。ケン輪番会長のは「2年前、企業はクラウドの活用に悩んでいたが、今は多くの企業がクラウドの活用を考えており、AIが大きな価値を生み出してくれることを理解している。25年には、大手企業の97%がAIを使うようになるだろう」と主張し、クラウド分野での競争はAIがカギを握るとの考えを示した。

 ただ、現時点の課題は計算に必要なコストが高いこと。ケン輪番会長は「AI技術で強力な計算力を手に入れ、コストを下げることができる。AIによって、ファーウェイのクラウドは、他社とは異なる特別なクラウドになる」と語った。
ウィリアム・シュー最高戦略マーケティング責任者

 AIの計算で、ファーウェイは、現在の技術では効率が悪いとみる。ケン輪番会長の次に講演した徐文偉(ウィリアム・シュー)取締役兼最高戦略マーケティング責任者は、限界を突破する技術として、光計算やDNAストレージ、原子レベルでの半導体製造についても研究開発を進める方針を披露し、「われわれの目標は理論の突破だけではない。基礎技術の発明もしないと、成長に限界が生まれてしまう」と実用化に向けて強い決意を示した。

研究開発は未来への投資

デビッド・ワンプロダクトソリューショングループプレジデント

 一方、B2B向け製品開発部門トップの汪涛(デビッド・ワン)専務取締役兼プロダクトソリューショングループプレジデントは、クラウド事業では「ハイブリッドクラウドが重要なポイントになる。ファーウェイの戦略は、AIをコアに最強のハイブリッドクラウドをつくることだ」とし、「これまで蓄積してきたICTの技術や経験、エコシステムのノウハウを全てファーウェイクラウドに盛り込む」と技術開発の方向性を紹介した。

 また「ファーウェイは製品を提供するだけの企業ではない。AI開発の秘訣は、パートナーと開発者と協力し、デバイスとクラウドの相乗効果で独自のAIエコシステムを育成することだ」と主張し、パートナーとの連携強化を約束した。

 最後に「研究開発のコンセプトは、未来のための投資。ビジネスの成功のためだけでなく、業界全体の成長につなげ、限界を突き破っていきたい」と主張。上海市で今秋開催するイベントで、強力な全シナリオAIソリューションと産業用アプリケーションを予告して講演を締めくくった。
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外部リンク

華為技術=https://www.huawei.com/cn/