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アシストが提案する有力商材 Web分離とファイル連携でモダンシステムに

2019/12/26 09:00

週刊BCN 2019年12月23日vol.1806掲載

1 インターネットに接続しない
ゼロトラストソリューション

 企業を狙ったサイバー攻撃は年々増加している。企業の多くは多層防御の観点からさまざまなレイヤーで対策を講じてきたが、どれだけセキュリティ対策にコストをかけても完全に侵入を遮断することは難しい。仮想化事業推進室営業部の青木裕明主査は「セキュリティと言ってもファイアウォールやアンチウイルス、ゲートウェイ、SOCと日々高度化していく攻撃に対して常に最新のセキュリティを構築し続けることはできない。セキュリティの考え方を見直す時期にきているのではないか」と指摘する。そこで現在同社が提案を強化しているのがWeb分離ソリューションの「Ericom Shield」だ。

 同製品はサーバー上にブラウザー専用の仮想コンテナを作り、エンドユーザーの端末からはインターネット接続をしない環境を構築するもの。VDIサービスベンダーである米Ericom Softwareの製品で、アシストは2011年から総代理店を務めている。

 仕組みとしては、サーバーがエンドユーザーの端末からブラウジングリクエストを受けた際、サーバー上でブラウザータブごとに仮想コンテナが立ち上がる。Webコンテンツは仮想コンテナ内で実行、レンダリングされ、エンドポイントのブラウザーには画像ストリームのみ送られる。また、ファイル無害化機能を標準で搭載しており、インターネット上からダウンロードされるドキュメントは全て無害化処理が施された状態でダウンロードされる。

 青木主査は同製品のメリットについて「他のWeb分離サービスの中でもユーザビリティが優れている」という。クライアント端末では何もインストールする必要がなく、エンドユーザーは特に新たな操作を覚える必要もない。コピーアンドペーストやメールについても対応しており、導入前後で操作性に変化が少ないという。また、VDIやSBCといったソリューションと比較してコストが安い点も大きなメリットとなっている。青木主査は「一般的なVDIが月額5000円前後で提供されているのに対して同製品では1ユーザー当たり2000円ほどで利用できる」という。
 
青木裕明 主査

 同製品の販売は18年に開始。以来、15~20社が導入しているという。中でも、過去にVDIなどの製品をすでに活用していた企業からのマイグレーションのケースが増えているといい、VDIと比較した際の操作感とコスト差が評価されている。

 もともと同社ではEricom Shieldとは別に米Ericom Softwareと連携した分離ソリューションを12年から提供してきた。15年に発生した年金機構のサーバーから年金情報が流出した事件を機に自治体や教育機関を中心に引き合いが強いという。近年では病院や金融といったミッションクリティカルな環境が求められる業種のユーザーが増えているほか、大手製造などの一般企業でも導入が進んでおり、裾野が広がっている。

 また同社は今年9月、アルプスシステムインテグレーション(ALSI)との協業を発表。同製品とALSIが提供するWebフィルターソリューションを連携させたサービスの提案を両社で強化していく。青木主査は「地方自治体への拡販に関してはパートナーの影響が強い。そういう意味ではALSIとの協業によって非常に広いカバレッジを確保することができた」と語る。今後、医療系や一般企業に向けて拡販を強化していく方針だ。青木主査は「多くの企業は検知型のソリューションやエンドポイントを活用しているが、そこにかけられているコストと人的リソースは少くない。多層防御からゼロトラストへ発想を変えて完全にインターネットから隔離された環境を作ってもらえればより本来のビジネスに集中できるようになるのでは」と強調した。

2 データの有機的統合を促す
ファイル連携サービス

 企業が業務で利用するシステムが複雑化している一方で、データを統合し、ビジネスに生かしていくことが重要になっている。アシストは、セゾン情報システムズが開発するデータ連携基盤「DataSpider Servista」を10年以上にわたって提供しており、今年6月からは同じくセゾン情報システムズのファイル転送ツール「HULFT」の販売を開始した。

 東日本技術本部情報基盤技術統括部技術3部の田中貴之部長は「DI(データ統合)ツールの市場は、DXに象徴されるようなIT投資の高まりによってここ数年で一気に盛り上がっている。連携ソリューションのラインアップにファイル転送を加えたことでより広いニーズに応えられるようになった」と語る。
 
左から、東日本技術本部情報基盤技術統括部技術3部の鏑木彩乃氏、田中貴之部長、
ビジネス推進部の寺田和歌子主任

 今回同社が取り扱いを開始したのはHULFTと、その管理・運用ミドルウェア「HULFT HUB」。さまざまなシステムから生成されたファイルをセキュアかつ確実に転送できるもので、製造や金融などの企業を中心にグローバルで約9500社が利用している。ファイル転送以外の機能としては文字コード変換や暗号化/復元機能を標準で搭載しているほか、WindowsやUNIX、Linuxの複数OSに対応、システムをまたいだ連携を実現できる。

 東日本技術本部情報基盤技術統括部ビジネス推進部の寺田和歌子主任は「大手企業では異なるシステムを複数のベンダーに開発してもらっているケースも多い。これらを直接連携することもできるが、一度ファイル連携を挟むことで不具合が起きた際の責任を明確にするというユースケースもある。マルチベンダーのシステム間連携はさまざまな面から評価していただいている」と強調する。

 同製品にはすでに多くのユーザーがいるが、東日本技術本部情報基盤技術統括部技術3部の鏑木彩乃氏は「上場企業の中でもファイル連携を導入していないところは多く、FTPで済ませている場合がある」という。今後は、HULFTを単体で販売していくだけでなく、従来提供してきたDataSpider Servistaと組み合わせた提案も行っていく。

 また11月7日には、セゾン情報システムがパブリッククラウドのストレージサービスに直接ファイルを転送できる新機能「クラウドストレージオプション」をHULFTに追加していることから、パブリッククラウドを活用しているユーザー取り込んでいく考えだ。田中部長は「当社は長年ミドルウェアを中心に多くのパッケージを提供してきた。品出しからサポートまでを一貫してワンストップでユーザーを支援することができる」と、アシストだからこそ提供できる価値を語った。(銭 君毅)
 
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