【地方IT市場の今・2】全国でも最大規模の356社(2020年3月1日現在)のSIerなどITサービス企業が加盟する神奈川県情報サービス産業協会(神情協)は、1987年の設立以来、会員数が今なお増え続けている。約400人が参加する九つの委員会活動が協会のエンジンとなっている。ベテランが牛耳るのではなく、若手の意見を積極的に取り入れる風通しのよい組織も魅力だ。神情協を統括する常山勝彦会長(ソフテム会長)をはじめとする幹部に、組織運営のコツを聞いた。
取材・文・撮影/細田 立圭志
神奈川県情報サービス産業協会の
常山勝彦会長
新卒の学生をIT業界に受け入れる仕組み
神情協には、企業経営やIT技術、教育研修、会員同士の親睦など九つもの委員会がある。加盟企業にとっては、幅広いIT分野の最新の業界情報が共有できるメリットがある。
各委員会の委員長を常務理事など神情協の幹部が務めているのもポイントだ。委員会の活動が幹部の「自分ゴト」となり、委員会内の若手の声や議論もその場で吸い上げられる。伝言ゲームにならないことで、スピーディーな決断や対応ができる仕組みとなっている。
具体的な九つの委員会は、「企業経営」「教育研究」「産学連携」「技術」「労働福祉」「広報」「横浜市交流」「川崎市交流」「女性活動ダイバーシティ」と多岐にわたる。
中でも産学連携委員会は、一人でも多くの新卒の学生を会員企業を含むIT業界に就職してもらうことを目的にしたもので、IT産業の持続的な発展に欠かせない活動の一つだ。学生に対する合同企業説明会や就職担当者との情報交換会、インターンシップ受け入れ企業の紹介や学生支援、企業から学校に講師を派遣するなど、学校との連携を深めている。
04年度から実施している「SE講座特別委員会」では、協会内で教育ツールとして使っている「SEハンドブック」を理系、文系問わずIT業界に興味のある学生の教材としても活用しながら、協会が認定した講師を派遣して教えている。約60人の講師が、神奈川県内の12の大学で、多いときは300人の学生に教えるという活動だ。
実際の現場の仕事に携わっている講師が話す内容は、具体的で説得力があることは言うまでもない。「どのようなデータベースを使っているか、どういう開発の方法を採用しているかなどの実体験を話すので、学生さんたちにIT業界について正しく理解してもらえる」と常山会長が語るように、会員企業にとってもIT業界を正しく理解した若い人材を獲得するための重要な活動となっている。採用後の双方のミスマッチが起きにくいわけだ。
「先端技術研究会」で技術の底上げ
会員企業同士で最新の技術や知識を共有しあう取り組みも活発だ。活動開始から約3年になる「先端技術研究会」では、幹事会社が講師役を務めて画像処理、ドローン、IoT、AI、RPA、画像生成の6項目のテーマを教えて、十数名の参加者の技術の習得を後押しする。神情協の会員全体の技術力の底上げを狙っている。
他県の情産協との情報交換も積極的に行い、毎年、二つの協会と意見交換会を開催しているという。昨年は愛媛と福岡の情産協と交換会を実施した。
「神情協には仲間を助け合う文化が根付いている。忙しい中、たくさんの委員会の事業を遂行することは大変だが、決してやらされているという感じではなく、自分たちも楽しみながら仲間のために汗をかいている」と前山浩志副会長(デジタルコム社長)は協会内の雰囲気について説明する。実際に、九つの委員会に出席するメンバーだけでも約400人が参加しているという。委員会内での議論も白熱して、会議の時間がオーバーすることもしばしばだとか。
神情協の前山浩志副会長
(デジタルコム社長)
もちろん、堅苦しいことばかりではない。労働福祉委員会によるフットサルやクルージングパーティー、地引網、船釣り大会など、若い人たち同士のリクリエーションも活発だ。
増えている会員企業の中には、本社が東京の企業もあるという。本社の所在地は東京でも、神奈川で仕事をしている人たちが「神情協で面白そうなことをしているようだ」と、うわさ話を聞きつけて加盟しているのだ。九つの委員会を通じて発揮される神情協のパワーが、DX推進を担うIT産業のベースを今後も支え続けるだろう。