セールスフォース・ドットコムは7月15日、カスタマーサービス基盤「Service Cloud」のオプション機能として「Service Cloud Voice」をリリースした。アマゾンウェブサービス(AWS)が提供するコンタクトセンターサービス「Amazon Connect」をService Cloudと統合してパッケージ化した新機能だ。両社は2016年に提携を発表し、今年6月にパートナーシップをさらに深め、個別の製品・サービスでの連携を強化していく意向を示していた。Service Cloud Voiceはその第一弾の成果だという。
具体的な機能としては、Service Cloudで管理するデジタルチャネル(チャット、メールなど)での顧客とのコミュニケーションや顧客情報と、Amazon Connectによる音声でのコミュニケーションを、一つのインターフェースで横断的に管理できるようになる。また、Amazon ConnectのAI音声分析機能により、顧客との通話内容をリアルタイムでテキスト化できる。セールスフォース側のAI「Service Cloud Einstein」が内容を分析してスタッフに次のアクションをサジェストしたり、後続業務の自動化や効率化を図る機能も備える。
コンタクトセンターで実際に顧客対応をするスタッフの応対品質向上や業務効率化につながるほか、管理者がテキストベースで顧客との通話状況を確認し、顧客対応中のスタッフに指示を出すことも可能になる。さらに、さまざまな顧客接点でのコミュニケーションの情報を横断的に分析できるようになり、顧客満足度向上のためのアクションも考えやすくなるとしている。
セールスフォースの湯浅雅達・執行役員
こうした機能をバンドルパッケージとしてクラウドで提供することで、スタッフのリモートワークを前提としたコンタクトセンターシステム構築のハードルを下げた形だ。セールスフォースの湯浅雅達・執行役員ソリューション営業本部本部長は「SIが必要な場合に膨らんでしまう初期コストを抑えられるのが大きなメリット。既存のコンタクトセンターソリューションのクラウド化や、突発的なコンタクトセンターの立ち上げといったニーズにも容易に対応できる」とアピールする。
AWSジャパンの阿部泰久・ISVパートナー本部本部長
また、AWSとの協業については「両社のパートナーシップを次のレベルに進める端緒になるのが今回の発表。AI/MLなど、AWSの優れた技術をセールスフォースのアプリケーションに直接取り込んでいく動きは、今後も幅広い領域に拡大していく」とコメントした。AWSジャパンの阿部泰久・パートナーアライアンス統括本部ISVパートナー本部本部長も「Amazon.comのコンタクトセンターで培ったテクノロジーとセールスフォースのCRMプラットフォームの組み合わせは非常に強力。ハイパフォーマンスで信頼性が高く、100%クラウドベースであることも特徴。顧客のニーズを先取りして、ともにサービスを進化させていきたい」と両社の協業の意義を強調した。
Service Cloud Voiceの利用には、1ユーザー当たり月額1万8000円から利用できるService Cloudのコアライセンスに加えて6000円のアドオンライセンスが必要。また、AWSには別途Amazon Connectの利用料を支払う。販売体制はセールスフォースの販路での販売がメインになるが、AWSの販路でも「顧客のニーズに応じてService Cloud Voiceを提案していく可能性はある」(AWSの阿部本部長)という。(本多和幸)